低エネルギー電子線によるポリマーの合成－電子線架橋ポリウレタンアクリルゲルフィルムの照射線量効果

Dose(Mrad) Dose rate(Mrads^-¹)	5 7.6	5 15.2	5 30.3	10 15.2	15 22.8	20 30.3
Degree of crystallinity(%) Crystallite size(Å) Stress at yield(kgcm^-²) Young's modulusx10^-³(kgcm^-²)	41.6 128 80.7 1.48	41.0 120 80.0 1.46	40.2 136 78.5 1.44	39.8 120 72.8 1.43	38.7 105 67.5 1.42	37.3 105 67.4 1.32

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作成： 1996/02/01 藤村　俊一データ番号　　　：010001 低エネルギー電子線によるポリマーの合成－電子線架橋ポリウレタンアクリルゲルフィルムの照射線量効果－目的　　　　　　：ウレタンアクリルプレポリマーの電子線架橋フィルムの特性試験放射線の種別　　：電子放射線源　　　　：電子加速器(175kV) 線量（率）　　　：5-200kGy, 15-303kGy/s 利用施設名　　　：照射条件　　　　：空気中、室温応用分野　　　　：材料分析、環境保全概要　　　　　　：　ウレタンアクリルプレポリマーに電子線照射で作製したフィルムに対する線量と線量率の影響を試験した。結晶化度、結晶サイズは線量増加とともに減少し、破断強度は増加する傾向を示したが線量率の影響はほとんどなかった。架橋密度のデータから50kGy 以下では末端のアクリル基の二重結合の架橋が主に進行し、50kGy を越えると電子線加熱の影響が大きくポリマー主鎖の架橋が進行する。詳細説明　　　　：　 1.フィルムの構造　　ポリウレタンアクリルプレポリマーに電子線を照射してフィルムを作成した。ゲル分率は50kGy(5Mrad, 10kGy=1Mrad)まで急激に上昇しその後飽和する。紫外線分光分析計で測定した700nmの吸光度は50kGyまでは変化が少なく、50 - 200kGyで増加しており、分子構造の変化が認められた。フィルムの表面状態を電子顕微鏡で観察した写真を図1に示す。図1　Scanning electron micrographs of gel film surfaces obtained from EB-cured UA-251M. (a)2.5Mrad;(b)5Mrad;(c)10Mrad;(d)20Mrad (1Mrad=10kGy).（原論文1より引用）　フィルムの表面には凹凸があり凸部はポリブチレンアジペートの結晶領域、凹部は非晶領域である。結晶サイズは25kGyから50kGyで大きく変化しているが、その後は線量の増加とともに徐々に小さくなり、表面が平滑になってゆく。照射線量によって結晶化度と結晶サイズは、低下する傾向が得られ、特に結晶サイズは10kGy以下で急激に減少する。　　フィルムを作成するためポリマーを溶融しているので、溶剤の揮発が結晶生成に影響したと考えられる。ガンマ線で架橋した場合は、ポリマーが溶融状態から冷却されるときに結合部が結晶の成長を阻害することが知られるている。本実験では、電子線照射によって架橋構造が変化し、表面状態の変化や結晶化度、結晶サイズの低下が起こったと考えられる。次に、ポリマーの分子量は照射によって減少する傾向にあるが、50kGyまでは段階的に、その後は緩やかになっており、分子構造の変化や結晶サイズの低下が架橋密度と緊密に関係していることが分かった。50kGy以下の低い線量でゲル分率が急激に増加し、分子量が増大する現象は、末端にあるアクリル基の二重結合が反応して架橋密度を増大させたためであり、25 kGyで最大のポリマー結合となる。一方、高線量では主鎖の架橋が進行して結晶サイズも減少している。一般に、架橋は結晶領域で起こりにくく、非晶領域で起こる。線量率効果を表1に示す。表1　Effects of dose rate on structure and properties of EB-cured UA-251M gel films (10kGy=1Mrad). （原論文1より引用） Dose(Mrad) Dose rate(Mrads^-¹) 5 7.6 5 15.2 5 30.3 10 15.2 15 22.8 20 30.3 Degree of crystallinity(%) Crystallite size(Å) Stress at yield(kgcm^-²) Young's modulusx10^-³(kgcm^-²) 41.6 128 80.7 1.48 41.0 120 80.0 1.46 40.2 136 78.5 1.44 39.8 120 72.8 1.43 38.7 105 67.5 1.42 37.3 105 67.4 1.32 　結晶化度が少し低下するので線量率効果は完全に無視は出来ないが、照射線量の影響に比べると非常に小さい。150kGy以上の線量では電子線照射による熱発生と重合化を示し、非晶部が増加する。　 2.機械特性　　電子線照射によって機械特性(降伏点強度、ヤング率、破断強度)が上昇する。図2にヤング率の変化を示すように、降伏点、ヤング率は25kGyで最高値となった。図2　Young's modulus of gel films obtained from EB-cured UA-251M as a function of dose(1Mrad=10kGy).（原論文1より引用）　一般に結晶化度が増えると降伏点、ヤング率が上昇するが、ポリプロピレンでは限られた範囲の結晶化度では結晶サイズが増加しヤング率が減少するとの報告があり、高結晶性ポリマーでは大きな結晶間の境界でストレスが集中するので機械特性の低下を起こすとの報告がある。本フィルムは25kGyまではポリプロピレンと同じく結晶サイズの影響で機械特性が低くく、それ以上では、架橋密度が増加し結晶化度が減少するので、ヤング率が低下している。なお、線量率効果は線量の影響に比べ非常に小さい。破断強度はポリブチレンアジペート分子の架橋によって照射とともに増加するが、伸びは全く変化しない。一般に、伸びは架橋結合の分子量に依存することから、低い線量では結合部が十分にないためポリマーが完全に伸びずに切断したと考えられ、高線量では伸びに関与しない非晶部にあるポリブチレンアジペート末端で架橋するので、伸びに関与する結晶部のポリマー分子量が線量に対して独立であるためと考えられる。　　結論としては、結晶構造をもつポリマーの電子線架橋によって高強度の新規なフィルムを作成した。電子線照射時の線量を上手く選定すれば更に高強度の性能が得られる。測定項目：ゲル分率(重量)、吸光度(紫外線分光分析)、表面観察(電子顕微鏡)、構造(X線回折装置)、機械特性(テンシロン) コメント　　　　：　1)印刷、コーティング分野では薄膜の被照射体を効率的に架橋する必要があり,UV照射と電子線照射が目的に合わせて採用されている。電子線照射は樹脂の強度を高くすることが容易であるが、設備投資が高額となる。最近は電子加速器の小型化によって設備費も下がっており、低エネルギーで十分に架橋する樹脂の開発が求められる。　2)本報告では主鎖にポリブチレンアジペート、末端にアクリル基を持つプレポリマーを用いて、結晶構造や機械特性の解析を行っているが、低線量で高強度のポリマーが得られている。原論文１ Data source 1： Synthesis of Polymer Materials by Low Energy Electron Beam. (Ⅱ)Effects of Irradiation Dose on EB-Cured Polyurethane-Acrylate Gel Films, Ando M, Uryu T* , Central Research Institute, Dai Nippon Printing Co.,Ltd., 1-1-1, Ichigayakaga-cho, Shinjuku-ku, Tokyo 162, Japan, * Institute of Industrial Science, University of Tokyo, 7-22-1, Roppongi, Minato-ku, Tokyo 106, Japan, Polymer J., Vol.19, No.4.p367 (1987) . キーワード：ウレタンアクリルプレポリマー、 EB架橋、結晶化度、線量率効果、破断強度 urethane-acrylate prepolymer, EB crosslinking, crystallinity, dose-rate Effects, tensile strength 分類コード：010301,010303,010107
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