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作成: 1996/10/14 監物 孝明

データ番号   :010036
放射線照射ポリエチレンを利用した人工関節
目的      :人工関節の新素材開発
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :コバルト60
線量(率)   :1-1000kGy
照射条件    :大気中
応用分野    :生体材料、工業材料

概要      :
 股関節と膝関節の人工関節の磨耗試験とシミュレータ試験結果及び臨床結果についてポリエチレンのクリープ変形を含む磨耗量の測定及び人工関節のしゅう動表面形状の観察結果より、材料及び材料の組み合わせについて比較検討した。その結果、アルミナと100 Mrad (1MGy) のガンマ線を照射した超高分子量ポリエチレンの組み合わせが最も優れていることが判明した。

詳細説明    :
 
 4種類の人工股関節( SOM:金属骨頭と100 Mrad (1MGy) ガンマ線照射した超高分子量ポリエチレンソケット、 T-28:金属骨頭と照射していない超高分子量ポリエチレンソケット Bioceram:アルミナ・セラミック骨頭と照射していない超高分子量ポリエチレンソケット、 照射した Bioceram:アルミナ・セラミック骨頭とガンマ線 100 Mrad 照射した超高分子量ポリエチレンソケット)について、臨床試験を行い、その後のソケットに使用しているポリエチレンの磨耗量の測定と表面の SEM 観察を行った。
  
1)ソケットの厚み減少量の測定
 7年間にわたりソケットの厚み減少量(クリープ変形と磨耗量)を測定した。測定装置は 1/50 mm の分解能、5倍のルーペ、0.2 mm の傾斜角スケールをもつバックライト型のデジタイザーと小型コンピューターからなるものを使用した。磨耗率は1年ごとのソケットの厚み減少量から計算した。結果を図1に示す。


図1 Comparison of wear rate of polyethylene socket of several kinds of total hip prostheses in clinical cases. (原論文1より引用。 Reproduced from Radiat. Phys. Chem., Vol.39, No.6, p.495-504, 1992, Fig. 4(p.499), H.Oonishi, Y.Takayama and E.Tsuji, Improvement of Polyethylene by irradiation in Artificial joint; Copyright(1992), with permission from Elsevier Science.)

 しゅう動部において、対金属よりも対アルミナの方が、超高分子量ポリエチレンの厚さの減少量が約 1/3と少ないこと、また超高分子量ポリエチレンに100 Mrad ガンマー線照射により強化した方が、非照射よりも厚さの減少量が約 1/6と少ないことが判明した。
  
2)抜去した超高分子量ポリエチレンソケットの荷重面の SEM 観察
 術後 6年と術後 9年の T-28について観察した結果、しゅう動側のみに照射したソケットの荷重がかかる部分にはなめらかなさざ波状の表面をした約0.1μm厚の明確な輪郭をもつ不規則な模様が現れた。線状傷痕と褶曲現象は照射していないソケットでは全く観察されなかった。これらの観察結果は、ガンマ線照射したポリエチレンの磨耗がきわめて少ないことを示唆している。
  
3)金属とアルミナに対するポリエチレンの摩擦と磨耗の実験
 ISすべり磨耗試験機を使用して、金属とアルミナに対して滑らした時の照射ポリエチレンと非照射ポリエチレンの摩擦と磨耗の試験を行った。その結果、ガンマ線々量が 0.1 から1 Mrad と 50 から 100 Mradのときがポリエチレンの磨耗量が小さくなることがわかった。SOM では 100 Mrad で照射したポリエチレンが使用されており、実験結果と臨床結果がよく一致していた。
  

コメント    :
 生体材料として、金属、セラミック、高分子材料が単独または複合化されて使用されており、最近は特に高分子材料の応用が積極的に展開されている。人工関節として重要な要求特性である摩耗性については、超高分子量ポリエチレンは大変優れている材料である。本報告では、さらに、ガンマ線照射により、摩耗性を向上させ、人工関節の改善をはかっている。長期の臨床試験により得られたデーターと実験結果とがよく一致している。ガンマー線の最適な照射量や照射条件等について今後、さらに研究が進めば、より多くの生体材料としての展開が期待される。

原論文1 Data source 1:
Improvement of Polyethylene by irradiation in Artificial joint,
H.Oonishi, Y.Takayama and E.Tsuji,
Department of Orthopaedic Surgery,Artificial Joint Section and Biomaterial Research Laboratory
Radiat. Phys. Chem., Vol.39, No.6, p.495-504,1992

原論文2 Data source 2:
抜去した人工関節のトライボロジー的考察
大西 啓靖、辻 栄治*、花立 有功*、水越 朋之*、
国立大阪南病院 整形外科、〒586 大阪府河内長野市木戸町 677の2、*大阪府立産業技術総合研究所、〒550 大阪府大阪市西区江之子島二丁目1の53
トライボロジスト 第36巻 第12号 928-934 (1991)

参考資料1 Reference 1:
人工関節の新素材
大西 啓靖
国立大阪南病院 整形外科、〒586 大阪府河内長野市木戸町 677の2
バイオメカニズム学会誌、Vol.13, No.1 (1989)

キーワード:人工関節、金属骨頭、アルミナ骨頭、ソケット、超高分子量ポリエチレン、磨耗、
artificial joint, metal head, alumina head, socket, ultra-high-molecular-weigt-polyethylene, wear
分類コード:010204

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