輸血用血液製剤の放射線照射装置

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作成： 1998/11/05 武藤　利雄データ番号　　　：010128 輸血用血液製剤の放射線照射装置目的　　　　　　：輸血後移植片対宿主病を防ぐための輸血用血液の放射線照射装置の解説。放射線の種別　　：エックス線,ガンマ線放射線源　　　　：15-50Gy 線量（率）　　　：X線照射装置、セシウム-137、コバルト-60、線形加速器利用施設名　　　：医療機関照射条件　　　　：血液または血液製剤を容器に入れ、そのまま照射する。応用分野　　　　：血液照射、血液製剤照射概要　　　　　　：　輸血用血液に含まれるリンパ球が輸血した患者の体組織を攻撃して傷害を起こす場合があり、これを輸血後移植片対宿主病(GVHD)という。輸血用血液を15～50Gyの線量で照射することにより、GVHDの発生を予防することができる。このために、X線照射装置またはCs-137などを用いたγ線照射装置が開発されている。詳細説明　　　　：　　組織適合性の一致しない他人から臓器移植や輸血を受けるとき、供血者のリンパ球が受血者に移入される。受血者が供血者のリンパ球を拒絶できない場合は、供血者のリンパ球が受血者の体内に生着し、増殖して、障害を起こす。これを輸血後移植片対宿主病(Graft Versus Host Disease, GVHD)という。本疾患に対する治療法は確立されていないため、これを予防するための手段として、供血者由来のリンパ球を不活性化する目的で、血液への放射線照射が行われている。　 1)血液の放射線照射効果　放射線照射の目的は、供血者血液のリンパ球を不活性化(細胞死)することである。リンパ球にX線やγ線を照射すると、リンパ球のDNAが傷害されて分裂・増殖能を失い、細胞死にいたる。したがって、照射された供血者のリンパ球は受血者の体内で増殖できず、GVHDは発症しない。　　GVHDの予防に必要な照射線量(血液の吸収線量)は15Gy以上とし、また、赤血球や血小板など、リンパ球以外の有効成分への障害を最小限に抑えるために、その上限は50Gy程度が上限とされている。混合リンパ球反応により測定したリンパ球の不活性化のようすを図1に示す。以上のように、輸血用血液を15～50Gyの範囲で照射することにより、GVHDを予防できるとされている。図1　X線照射による全血液中のリンパ球の不活性化(nは検体数)（原論文2より引用） 2)実用化されている照射装置　血液の照射ではX線およびγ線が用いられている。実際に血液照射装置として使用されているものを以下に述べる。　 (1)X線照射装置　日本で開発され、血液センターを中心に普及している。血液を樹脂製の容器に入れ、上下(2管球の場合)に設置されたX線管の間で照射物を定速回転させて、約150keVのエネルギーのX線を照射する。従来の1管球型と比較して均一性、確実性とも改善された。ただし、γ線に比べてエネルギーが低く、管球の消耗等の変動要因があることから、厚みを持った被照射物に対し、照射むらを低く抑えていくことが要求される。その点を考慮して1バック単位で照射を行う装置も販売されている。　 (2)γ線照射装置(セシウム-137線源を使用) 　　世界的に最も普及している専用装置である。血液を専用の金属容器に入れ、ペンシル状の線源の前で定速回転させて照射する。γ線照射装置の概念図を図2に示す。セシウム-137線源からのγ線エネルギーは662keVと比較的高く、均一性の高い、確実な照射が行える。また、セシウム-137の半減期は30年と長く安定しており、半年毎の校正により、精度を保つことが可能である。さらに、短時間照射が可能であり、緊急輸血にも適している。図2　γ線照射装置の概念図（原論文1より引用）　 (3)その他の照射装置　コバルト-60線源を使用した治療装置およびがん治療用の線形加速器が血液照射装置として使われている。いずれも専用機と異なり、回転機構は設けられていない。線形加速器を使用する場合、通常、血液を上下2枚の樹脂プレートにはさみ、テーブル上に置く。上側のプレートは照射野で二次電子平衡をもたらし、下側のプレートは散乱線の戻りを与え、均一な照射をより確実にする。コメント　　　　：　現状では、GVHDに対する有効な治療法はないといわれている。従って、予防が必須である。予防法としては、採決後2週間以上経った古い血液を使う、近親者からの輸血を避ける、自己血輸血を実施する等の方法があるが、確実性に欠ける。確立している予防法は、血液の放射線照射である。　　日本輸血学会から「輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドライン(Ⅱ)」が出されており、照射の必要度別に疾患を分けて、15～50Gyの範囲で照射することを勧めている。放射線の種類としては、X線に比べてγ線が、均一性の高い確実な照射が行えるため優れているといえる。原論文１ Data source 1：血液製剤放射線照射装置の現状阿部　淳也丸紅(株) 放射線と産業 76、63-65(1997) 原論文２ Data source 2：輸血後移植片対宿主病を防ぐための輸血用血液の放射線照射について田山　達也*、山中　烈次** *日本赤十字社中央血液センター、**日本赤十字社血液事業部 Isotope News 534,13-15(1998) 参考資料１ Reference 1：輸血後GVHD 伊藤　和彦京都大学医学部日本内科学会誌 85,834-838(1996) キーワード：血液、血液製剤、移植片対宿主病、GVHD、放射線照射、照射装置、X線、ガンマ線 blood, blood products, graft-versus-host disease, GVHD, irradiation, irradiation equipment, X-ray, gamma-ray 分類コード：010404
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