電子ビーム照射による低濃度NOx排ガス(トンネル換気ガス)の処理技術　

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作成： 1999/10/20 鈴木　良治　データ番号　　　：010163 電子ビーム照射による低濃度NOx排ガス(トンネル換気ガス)の処理技術　目的　　　　　　：自動車トンネル換気ガス等に含まれる数ppm程度のNOxを電子ビーム照射により処理する技術の紹介放射線の種別　　：電子放射線源　　　　：電子加速器(0.5-0.8MeV,25-500mA) 線量（率）　　　：0.1-1.2kGy 利用施設名　　　：首都高速湾岸線13号地換気所照射条件　　　　：自動車トンネル換気ガスを常温(大気温度)で電子ビーム処理する。応用分野　　　　：自動車トンネル換気ガス、閉鎖型(地下又はビル内)駐車場換気ガス概要　　　　　　：　自動車トンネル換気ガスのような低濃度NOx排ガスを電子ビーム照射により処理する技術で、アルカリ物質(炭酸カリウム又はアンモニアガス)添加工程、電子ビーム照射工程、集じん工程、オゾン分解工程、処理ガス排出工程から構成される。処理ガス量が50,000m³/h(20℃)の装置を1992年から1994年の期間に東京都と(株)荏原製作所が共同で首都高速湾岸線13号地換気所に設置し、実証試験を実施した結果、脱硝率80%以上の成果が得られた。　詳細説明　　　　：　 <都市部の窒素酸化物低減対策> 　都市部の窒素酸化物(環境基準の項目は二酸化窒素)による大気汚染は、この10年、改善が進まず大変厳しい状況にある。窒素酸化物を削減するために、自動車排出ガス規制の強化、交通量規制などが実施されてきたが、環境基準を達成できない地域は依然として多い。　窒素酸化物低減技術は、高濃度NOxを含有する燃焼排ガスに対しては脱硝触媒を用いた方法が一般的であるが、自動車トンネル換気ガスのような低濃度NOx及び大気温度では処理条件が大きく異なるため、新たな技術開発が必要であった。 1、脱硝装置のフローシート図1　脱硝装置のフローシート。　①換気ガス導入部　既設換気ダクト吐出部より、換気ガスを導入する。②アンモニア添加工程　NO_x濃度と換気ガス量から求めたNO_x総量に対して、あらかじめ設定した当量のアンモニアを連続的に添加する。　③電子ビーム照射工程　反応器中の換気ガスに電子ビームを照射することにより、NO_xは硝酸となり、さらにアンモニアと反応して、そのほとんどが硝酸アンモニウム(硝安)の粉体となる。　④集塵工程　湿式電気集塵機で換気ガスに含まれる粉じんと生成した硝安などを分離除去する。また、湿式電気集塵機の洗浄水は、ろ過装置で固形物を除去して循環使用する。　⑤オゾン分解工程　湿式電気集塵機で除塵後の換気ガスには、わずかなオゾンが含まれているため、活性炭装置で換気ガス中の生成オゾンを分解するとともに、残留するNO₂の一部を吸着する。　⑥処理ガス排出部　誘引ファンにより、浄化した換気ガスを大気に放出する。　（原論文2より引用）　自動車トンネル換気ガスの脱硝装置は、アルカリ物質(炭酸カリウム又はアンモニアガス)添加工程、電子ビーム照射工程、集じん工程、オゾン分解工程、処理ガス排出工程から構成される。（図１）　　自動車トンネル換気ガスは反応器に導かれ、電子ビーム発生装置より電子ビームが照射される。そこで窒素酸化物は酸化されて硝酸ミストとなり、換気ガスと共に湿式電気集じん機に導かれる。硝酸ミストは、湿式電気集じん機循環水に添加された炭酸カリウム又は反応器前段に添加されたアンモニアガスなどのアルカリ物質と反応し、硝酸カリウム又は硝酸アンモニウムとなり、肥料として利用できる。　　湿式電気集じん機で除じん後の換気ガスには、電子ビーム照射で生成したわずかなオゾンが含まれているため、活性炭装置で分解するとともに、残留する二酸化窒素の一部を吸着する。浄化した換気ガスは誘引ファンにより大気に放出する。 2、反応機構図2　反応機構　（原論文2より引用）　自動車トンネル換気ガスに電子ビームを照射すると、換気ガスの主成分である酸素、水から、極めて反応性が高い活性種(OH,O,HO₂など)が生成する。窒素酸化物は、これらの活性種と反応し、硝酸となる。さらにアルカリ物質(炭酸カリウム又はアンモニア)と反応し、肥料として有用な硝酸カリウム又は硝酸アンモニウムに変わる。（図２）　 <特徴> 　本技術の特徴を以下に示す。 1) 共存するガス成分、ばいじん、湿度、温度等の影響を受けない。 2) 処理に要するエネルギーが少ない。 3) 安定して高い脱硝率が得られる。また、同時に共存する極低濃度の硫黄酸化物も高効率で除去できる。 4) 副生品が有効利用できる(肥料として活用できる)。　 3、自動車トンネル換気ガス処理試験装置図3　首都高速湾岸線13号地換気所に設置した低濃度脱硝装置　（原論文2より引用）　1992年から1994年の期間に東京都と(株)荏原製作所が共同で実施した自動車トンネル換気ガス処理試験装置（図３）の設計条件及び成果の概要は以下の通りである。 1) 処理ガス量：50,000m³/h(20℃) 2) NOx濃度：3ppm 3) ばいじん濃度：1.5mg/m³ 4) 脱硝率：80%以上 5) 出口ばいじん：入口ばいじん濃度以下 6) 出口オゾン：0.1ppm以下　コメント　　　　：　電子ビーム照射により生成するOH,O,HO₂等のラジカルの高い酸化力に着目し、トンネル換気ガス中の低濃度NOxを瞬時に酸化させ最終的に有用な肥料として回収する本技術は、公害防止に放射線を利用したユニークな技術である。　原論文１ Data source 1：電子ビームによる排ガス中の微量有害成分の除去技術青木　慎治 (株)荏原製作所第6回放射線プロセスシンポジウム(H8.1.17) 　原論文２ Data source 2：低濃度脱硝装置の実用化調査東京都環境保全局、(株)荏原製作所カタログ参考資料１ Reference 1：排ガスの浄化方法青木　慎治、鈴木　良治、前沢　章彦 (株)荏原製作所特許第1888778号(特公平6-18611) 　キーワード：電子ビーム、低濃度NOx、自動車トンネル、トンネル換気ガス、脱硝、肥料、活性炭、窒素酸化物、硫黄酸化物、二酸化窒素 electron　beam, low concentration NOx, automobile tunnel, tunnel ventilation gas, denitration, fertilizer, activated carbon, nitrogen oxides, sulfur oxides, nitrogen dioxide 　分類コード：010501
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