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作成: 2007/09/20 桂 一郎
データ番号 :010305
1.5MeV自己遮蔽型ダイナミトロン加速器の現状
目的 :工業用途の新型中エネルギー電子加速器の開発
放射線の種別 :電子
放射線源 :電子加速器
応用分野 :電線、フィルム/シート、タイヤ、医療用具
概要 :
Radiation Dynamics Inc.(RDI)はダイナミトロン加速器の新分野を開拓するため、何種かの新形モデルを開発している。そのうち、1.5MeV/100kWの自己遮蔽モデルの開発を中心に新型機種の状況を報告する。
詳細説明 :
RDIは1958年に最初のダイナミトロンを開発して半世紀、最近の市場ニーズに合うように新型モデルを開発している。1.5MeV自己遮蔽型はそのうちの一つである。今まで自己遮蔽型はSurebeamなど一部のモデルを除いて1MeV未満に限られていたが、電線などの分野で、人員削減、スクラップの低減化を求める要求が強まり、製造ラインの中に設置する完全なインライン処理が可能な自己遮蔽の1.5MeV機の開発をはじめた。できるかぎり、コンパクトにするため遮蔽はスチールと鉛で構成し、幅広い製品需要に応えられるよう加速エネルギーは300KeV〜1.5MeVを選定した。遮蔽を含んで所要床面積は5m2以下で高さは約5mとなる。図1にシステムの断面図を示す。
図1 1.5MeV自己遮蔽加速器断面(上部遮蔽なし) (原論文1より引用)
小さな床面積で設置可能なので、既存ライン内に追加設置する場合でも機器の再配置は最小限で済む。加速器本体では加速管の周りを新設計の環状整流器コラムで囲み、その外側にRF電極と浮遊容量を形成するRFカップリングリングを配置しているため、全体寸法が小さくできる。そのため、遮蔽の大きさが小さくなり重量も低減可能である。工業用3極管を通じて供給される1次電源はRFトランスで100kHzの高周波へ変換されカスケード式昇圧回路へ供給され、最終的に高圧ターミナルで蓄えられる高電圧まで昇圧される。一方電子は加速管の高電圧側に設置されたプラナー型のタングステンフィラメントを備えた電子銃で発生する。このフィラメントは最大200mAの電流発生が可能で、この電流で15,000時間以上の寿命を持っている。電子銃へはRF回路から電力が供給されており、このコントロールは光信号で外部から行われているので、モータージェネレーターなどの機械的な装置は不要である。この方式では高電圧ターミナルに蓄えられるエネルギーは通常100J以下と小さなものになっている。これらのシステムはSF6ガス絶縁されたタンク内に収納されている。またAC/DC変換効率は約60%となっている。また加速されたビームはスキャンホーンから40μmのTiウィンドウを経て照射される。スキャンシステムはプログラマブルEE-PROMからの信号によるウエーブフォーム発生器によって駆動される。
この新システムで実現する特長には次のようなものがある。
・コンパクトな構造で遮蔽が小さく、コストが抑えられる
・小型高性能の新整流素子の採用
・熱負荷が少なく効率を改善した新設計のRFトランス
・簡素化された新しいビーム電流コントロール
・新しいMillenium PCによるコントロールシステム
・製品に応じた搬送装置と遮蔽のインターフェース
図2にフィルム/シートあるいはタイヤ処理用のシステムの例を示す
図2 上下遮蔽と搬送装置を組み込んだ配置例 (原論文1より引用)
このシステムはEZ E-Beamという主に電線のインライン処理を狙った550KeV自己遮蔽型加速器システムの発展形である。1.5MeVのものはまだ構想の段階で実機は製作されていないとのことであるが、EZ-Beamはすでに相当数が実績ある。
図3にEZ-Beamの外観写真を示す。
図3 EZ E-Beam 外観写真
また RDIは5MeVの高エネルギー機でも60mAの高電流マシンを試作している。これは特にX線変換を目標にしたもので、医療用具の滅菌を念頭に開発しているものである。5MeVのX線変換効率は約5%であるから、実行効率を考慮してほぼ10kWでのX線照射を目指している。
コメント :
大型自己遮蔽機は遮蔽の重量が問題になる。床面積を小さくすれば設置場所の地耐力を大きくする必要があり、狙い通り設置のし易いものになるかこの点の検討が必要であろう。なおEZ E-Beamは20tの重量がある。また最小エネルギーは300KeVとのことであるが、40μmのTiウィンドウでは厚すぎてビーム損失の熱発生に耐えられるのか疑問である。余程冷却を検討する必要があろう。
原論文1 Data source 1:
The new IBA self-shielded dynamitron accelerator for industrial applications
R. A. Galloway, S. DeNeuter, T.F. Lisanti, M.R.Cleland
IBA Technology Group, Long Island Facility
Radiation Physics and Chemistry 71(2004)
キーワード:電子線、電子加速器、自己遮蔽、ダイナミトロン、RDI、インライン装置、高出力、工業用途、
electron beam,electron beam accelerator,self-shield,Dynamitron,RDI,in-line system,high power,industrial application
分類コード:010105, 010107, 010402
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