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作成: 1996/12/25 山本 和高

データ番号   :030014
骨塩定量-骨粗鬆症の予防
目的      :骨粗鬆症の診断、予防を目的とした骨塩定量検査の方法の紹介
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :X 線管
応用分野    :医学、診断、非破壊検査

概要      :
 人口の高齢化に伴い骨粗鬆症が注目されるようになり、骨粗鬆症予防検診も各地で行われている。X 線や超音波を用いた幾つかの骨塩定量検査法が、骨粗鬆症の診断や検診に利用されている。骨粗鬆症の予防は、適切な運動と充分なカルシウムの摂取により骨量の減少をおさえることができる。

詳細説明    :
 加齢に伴って骨量は減少し、ひどくなると骨がすかすかになる骨粗鬆症となり、つまずいたりしただけでも骨折を起こしてしまう危険性が高くなる。図 1 に脊髄骨の粗鬆化の標本を示す。


図1 正常(上段)〜骨粗鬆症(下段)の脊椎骨の標本(原論文1より引用)

 最上段の正常な背椎骨は密に詰まっているが、下段になるにしたがって粗鬆化が進行し、骨梁が減少してすかすかになり、骨粗鬆症患者の背椎骨は最下段のようになる。
 図2に男性及び女性の加齢(Age)による骨塩量(BMD : Bone Mineral Density)の低下を示す。特に、女性は閉経期以後、急速に骨量が減少しており骨粗鬆化が進むことが推定できる。


図2 二重エネルギー X 線吸収法(DXA)で測定した腰椎の骨塩量(BMD)の年齢による変化(正常範囲)。(原論文2の表をもとに作図)

 女性(右図)では,BMDは40才(閉経期)以降に急激に減少する。0.70 g/cm2以下になると骨折を起こす可能性が高くなる。65 才以上の人口の約 30% が骨粗鬆症ともいわれるが、高齢者の骨折、特に大腿骨頚部骨折は、寝たきりに結びつく可能性も高い。骨粗鬆症は、適当な運動を続け、カルシウムを充分に摂取することで、かなり予防することができることがわかってきた。骨粗鬆症の診断や予防には、個々人の骨の状態を正確に知ることが必要で、そのために骨塩定量検査が検診としても行われるようになった。
 骨 X 線像は、骨皮質や骨梁などの骨形態の診断には適しており、骨粗鬆症に伴う腰椎の変形、骨梁の消失などの所見がみられれば骨粗鬆症と診断できる。しかし、軽度の骨カルシウム量の減少を評価することは困難であり、定量的に数値化することはできない。そのため、骨粗鬆症に対する検診には、骨に含まれているカルシウム量を正確に、定量的に測定する骨塩定量検査法が用いられる。骨塩定量検査法として、次の4種が代表的である。
 
1.単一エネルギー X 線吸収法(SXA)
 1種類のエネルギーの X 線を用いて前腕(橈骨、尺骨)などの骨の X 線吸収値を測定する。骨以外の筋肉や脂肪組織による X 線吸収の影響を減らすために、水をいれた一定の容器の中に測定部位を浸した状態で検査を行う。したがって、腹部(腰椎)などには応用できない。
 
2.定量的 CT 検査法(QCT)
 CT 像の骨の部分の吸収値(CT値)を計測し、同じ断面で測定した既知の密度を持つ物質の CT 値から、目的とする骨の密度を測定する。前腕(橈骨)の部分を測定する末梢骨 QCT 専用装置も販売されている。3 次元的な単位体積あたりの骨塩量を測定することができるが、CT の断層面が異なると結果も変わってくるので、再現性には問題があり、経過観察には利用しがたい。
 
3.二重エネルギー X 線吸収法(DXA)
 エネルギーの異なる 2 種類の X 線を用いる方法で、両者の吸収値の変化から骨以外の組織による X 線吸収を補正することができる。腰(腰椎)、股関節部(大腿骨頭〜頚部)などが主に測定されるが、全身の測定も可能な装置もある。ファンビームを用いる装置では測定に要する時間も短くなっている。ただし、X 線の投映像を用いるために得られる骨塩定量の結果は単位面積あたりの密度(g/cm2)となる。図 3 にDXA骨塩測定装置で示される検査画面の一例を示す。


図3 二重エネルギー X 線吸収法(DXA)骨塩定量装置による腰椎測定(腰椎正面)結果の表示画面

 腰椎(正面)測定の結果として、腰椎L1〜L4のBMDが個々に示されている。
 
4.定量的超音波骨密度測定法(QUS)
 超音波が骨の中を通過する速度(超音波伝播速度)や骨を通過する間に超音波のエネルギーが減少する程度(超音波減衰量)などを骨密度の指標として測定する。通常、踵骨を測定するので装置が小さく、放射線被曝がなく妊娠の可能性のある女性に対しても安全に検査できるといった特徴があり、骨塩定量検診に広く利用されている。得られた結果は、X 線を用いて測定した骨塩量と有意な相関を示すことが報告されているが、具体的な意義については、まだ完全には解明されていない。

コメント    :
 上記以外にも、Gd-153から放出されるγ線を用いる方法などがあるが、いずれの検査法を用いても、個々人の骨塩量を定量的に評価することができ、骨粗鬆症の診断や予防に有用である。ただし、検査法によって得られる測定値そのものはかなり異なる。装置による測定誤差は 1% 前後とされているが、使用法が適切でなければもっと大きくなってしまう。骨の変化は非常に小さく、十分にカルシウムを摂取して適切な運動を続けたとしても、骨塩量の増加は 1 年に 0.5% 程度と考えられており、骨粗鬆症の予防の効果を評価するには少なくとも 3〜5 年間に及ぶ長期的な経過観察が必要である。


原論文1 Data source 1:
骨粗鬆症を予防するための基礎知識
江澤 郁子
日本女大家政
NEWTON別冊12月号、pp.166-171、1996

原論文2 Data source 2:
Bone mineral measurement in Japan
Masao Fukunaga
Department of Nuclear Medicine, Kawasaki Medical School
Syllabus of 6th Asia Oceania Cong.Nucl.Med.Bio., 9 -11, 1996

参考資料1 Reference 1:
DXA X線骨密度測定装置 QDR4500 ACCLIAM TM SERIES
東洋メディック
パンフレット

キーワード:骨粗鬆症,osteoporosis,骨密度,bone mineral density,単一 X 線吸収法,single X-ray absorptiometry,SXA,定量的 CT 検査法,quantitative CT,QCT,二重エネルギー X 線吸収法,dual energy X-ray absoptiometry,DXA
分類コード:030105,030401,040301

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