心筋シンチグラフィ用注射剤

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作成： 1996/12/01 鷲野　弘明データ番号　　　：030018 心筋シンチグラフィ用注射剤目的　　　　　　：心筋シンチグラフィ用注射剤の特徴の説明放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：²⁰¹Tl,⁹⁹^mTc 応用分野　　　　：医学概要　　　　　　：心筋シンチグラフィ用注射剤は、心臓疾患の診断を目的とする診断用医薬品で、我国では塩化タリウム注射液など３種類が製造販売されている。塩化タリウム注射剤は、静脈内投与後心筋局所血流に応じて速やかに心筋内に分布し、心筋シンチグラムが得られる。心筋シンチグラムは、心筋梗塞や狭心症など心筋血液循環障害の診断に有用である。特に負荷心筋シンチグラフィは、狭心症診断で負荷心電図より有用と考えられている。詳細説明　　　　：　心筋シンチグラフィ用注射剤は、心臓疾患の診断を目的とする診断用医薬品である。我国では、現在塩化タリウム(²⁰¹Tl)注射液(以下²⁰¹TlCl注射液)、ヘキサキス(2-メトキシブチルイソニトリル)テクネチウム(⁹⁹^mTc)注射液(以下⁹⁹^mTc-MIBI注射液)及びテトロホスミンテクネチウム(⁹⁹^mTc)注射液(以下⁹⁹^mTc-TF注射液)の3種類が製造販売されている。３種の製剤は、各々化学的には異なるが臨床的な有用性は概ね同じである。　これら注射剤は、いずれも静脈内に注射されると心筋局所血流に応じて速やかに心筋内に分布し、心筋シンチグラムが得られる。心筋シンチグラフィは、特に心筋梗塞の診断に有用であり、負荷心筋シンチグラフィでは、負荷心電図に比べ狭心症をより鋭敏にかつ特異的に診断できると言われている。²⁰¹TlCl注射液の場合、タリウム-201(²⁰¹Tl)から変換した水銀の特性X線(69～80keV)がシンチグラムを描くのに適しており、また物理的半減期が比較的短く(72.9 時間)β線を放出しないため、患者の被曝が少ないという利点を有する。²⁰¹TlCl注射液は、最初に上市され一番長い歴史を持っている。このレコードでは、²⁰¹TlCl注射液について説明する。⁹⁹^mTc-MIBI注射液と⁹⁹^mTc-TF注射液については、別レコードを参照されたい。 1. 塩化タリウム(²⁰¹Tl)注射液の組成　本注射液は、水性の注射液で、²⁰¹Tlを塩化第一タリウム(TlCl)の形で含む。注射液の組成や特徴は、表1に示した。表1　塩化タリウム(²⁰¹Tl)注射液の組成・性状（原論文2より引用） ---------------------------------------------------- 組成　　　²⁰¹Tl(検定日時において) 74 MBq/ml ---------------------------------------------------- 性状　　　無色澄明の液ｐＨ　　　4.0～8.0 浸透圧比　約1(0.9%塩化ナトリウム溶液に対する比) ---------------------------------------------------- 2. ²⁰¹Tl注射液の効能又は効果　心筋シンチグラフィによる心臓疾患の診断。 3. ²⁰¹Tl注射液の用法及び用量　通常、成人には本注射液74 MBqを肘静脈内に注射し、投与後5～10分よりシンチレーションカメラで正面像、左前斜位像、左側画像を含む多方向におけるシンチグラムをとる。画像は、プラナー像よりSPECT装置を用いて2次元断層像として得た方が好ましい。投与量は、年齢、体重及び検査方法により適宜増減する。 4. ²⁰¹Tl注射液の薬効薬理　タリウムは周期律表Ⅲ-A族に属する金属であり、その一価イオンTl⁺は、Ⅰ-A族に属するカリウムイオン(以下K⁺)と類似した生体内挙動を示すことが知られている。K⁺は、正常心筋では心筋細胞膜のNa⁺-K⁺ATPase系により心筋細胞内に能動的に取り込まれ、心筋内に集積する。この正常心筋内への取り込みは、主に局所心筋血流に比例しており、K⁺では初回冠動脈通過で約70 %が取り込まれるとされる。従って、K⁺と類似の体内動態を示す本注射液を静脈内注射すると、全身の筋肉、特に筋活動の活発な心筋には多く分布するが、虚血などの血液循環障害のある心筋部位には分布しない。 5. ²⁰¹Tl注射液の体内薬物動態本注射液の初期血中クリアランスの半減期は約5分、24時間以降における半減期は4日であった。腎臓では、5分後まで増加する傾向をとり、10分以後は緩やかに減少する傾向を示した。心臓及び肺では、本注射液投与直後に速い減少を示し、2～5分以後緩やかな減少となった。減少の速度は常に肺が心臓より大きかった。また、本注射液は尿より糞中に多く排泄され、生体内では代謝されなかった。 6. ²⁰¹Tl注射液の臨床適用　臨床試験において、心臓疾患の分野で本注射液が有効と報告された適応症は、心筋梗塞、狭心症、不整脈などである。代表的なシンチグラムの例を図1に示した。図1　健常人及び労作性狭心症患者の²⁰¹TlCl SPECT像　健常人と比較して労作正狭心症患者の運動負荷後 SPECT像(右上段：EX)では、中隔前部と心尖に至る左心壁下部において心筋血流低下領域が集積欠損として見られる。しかし、投与3時間後(右下段：RD)では放射能が再分布しており、心筋虚血領域が壊死していないことが示唆される。（原論文1より引用） 7. ²⁰¹Tl注射液の副作用臨床試験及び副作用頻度調査(全36,548例)において副作用が認められた例はなかった。現在までに副作用自発報告において、アレルギー反応、多形滲出性紅斑、口内苦味感が各1件、薬品臭が2件報告されている。原論文１ Data source 1：日本薬局方　塩化タリウム(²⁰¹Tl)注射液日本メジフィジックス株式会社パンフレット原論文２ Data source 2：日本薬局方　塩化タリウム(²⁰¹Tl)注射液 (社)日本アイソトープ協会インビボ放射性医薬品添付文書集(平成７年７月), p.64-65，p.132-133, 参考資料１ Reference 1： Ritchie,J.L. et al. Circulation 56:p.66-71, 1977 参考資料２ Reference 2：成田　充啓他核医学 15:p.57-67, 1978 参考資料３ Reference 3： Gehling,P.J., Hammond,P.B. et al. J. Pharm. Exp. Therap. 155:p.187-201, 1967 参考資料４ Reference 4： Britten,J.S., Blank,M. et al. Bioch. Bioph. Acta 159:p.160-166, 1968 参考資料５ Reference 5：久田　欣一編最新核医学(金原出版,東京), p.205, 1980 参考資料６ Reference 6：鈴木　雅紹他核医学 15:p.27-40, 1978 キーワード：放射性医薬品, 塩化タリウム(201Tl)注射液, 心筋シンチグラフィ, 心臓病, 心筋梗塞, 狭心症, 心筋バイアビリティ, radiopharmaceutical, 201TlCl, myocardial scintigraphy, cardiac diseases, myocardial infarction, cardiac angina, myocardial viability 分類コード：030301,030401,030502,040204
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