骨巨細胞腫の画像診断

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作成： 1999/03/22 遠藤　啓吾データ番号　　　：030030 骨巨細胞腫の画像診断目的　　　　　　：骨巨細胞腫の単純X線像、CT像、MRI像による診断の紹介放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：X線管応用分野　　　　：医学、診断、非破壊検査概要　　　　　　：骨巨細胞腫は、成人の長管骨骨端部に好発する骨破壊性腫瘍であり、好発年齢は20～40歳代に多く認められ、発生頻度は、病理診断の得られた原発性良性骨腫瘍の約20%と比較的高い。臨床症状は、非特異的で局所の痛みと腫脹であり、痛みの多くは関節痛として自覚されている。橈骨、脛骨および肩甲骨に発生した症例について、単純X線、造影CT、造影MRIによる診断結果を紹介する。詳細説明　　　　：　骨巨細胞腫は、成人の長管骨骨端部に好発する骨破壊性腫瘍であり、骨端から起こり良性と悪性の両者がある。また、好発年齢は20～40歳代に多く認められる疾患であり、若年者、老年者に少なく、特に成長軟骨閉鎖前に見られるものは、極めて希である。骨巨細胞腫はの発生頻度は、病理診断の得られた原発性良性骨腫瘍の約20%と比較的高い。これは、活発な局所の骨吸収をきたすために外科治療の対象となり発見しやすいためである。　臨床症状は、非特異的で局所の痛みと腫脹であり、痛みの多くは関節痛として自覚されている。この症例の内、約10%は病的骨折により発症したものである。成人の長管骨の骨幹端から骨端に及ぶ部位であり、特に大腿骨遠位の脛骨近位、上腕骨近位、橈骨遠位などの骨の成長に多く見られる。体幹部の骨では、脊椎椎体(特に仙骨)や腸骨などに多く見られる。四肢末梢の小骨に発生することは稀である。　 1.骨巨細胞腫の診断例　骨巨細胞腫の画像診断は、腫瘍の発生部位と患者の年来を考慮すれば、単純X線像で十分な場合が多い。扁平骨や椎体などに発生した腫瘍では、CT像が特徴をよく描出する。また、希な部位、希な年齢層に発生した腫瘍では、MRIが役立つことがある。　図1に、橈骨に発生した巨細胞腫の診断例を示す。図1　橈骨巨細胞腫(28歳,男性)の診断例　a)単純X線像　b)造影CT像　c)造影MRI像（原論文1より引用）　図1a)単純X線像では、橈骨遠位骨端から骨幹端にかけて大きな骨吸収像(①→)を認める。骨吸収辺縁は明瞭であり、シェル状の骨膜反応(②→)を伴い、いわゆるSoap-bubble appearanceを呈する。図1b)CT像においては、腫瘍(①→)がシェル状の骨膜反応(②→)内に保たれており、腫瘍内に石灰化が含まれていないことが確認できる。図1c)のMRI像では、腫瘍が均一に造影されており、関節内にまで腫瘍(①→)が浸潤していないと判断できる。　図2に、脛骨に発生した巨細胞腫の診断例を示す。図2　脛骨巨細胞腫(32歳,男性)の診断例　a)単純X線像　b)造影CT像　c)造影MRI像（原論文1より引用）　図2a)単純X線像では、脛骨近位骨端から骨幹端にかけて大きな骨吸収像(①→)を認める。外側骨皮質は吸収(②→)されている。図2b)CT像においては、腫瘍(①→)が骨膜内に止まっていることがわかる。骨膜下の所々にシェル状の骨形成(②→)がみられる。腫瘍内部に造影されない壊死部の存在が疑われる。図2c)のT₂強調MRI像では、腫瘍と壊死部の区別がつかない。　図3に、肩甲骨に発生した巨細胞腫の診断例を示す。図3　肩甲骨巨細胞腫(25歳,女性)の診断例　a)単純X線像　b)造影CT像　c)造影MRI像（原論文1より引用）　図3a)単純X線像では、肩甲骨体部が膨隆しているが、X線像では全容が把握できない。図3b)CT像においては、肩甲骨体部がシェル状の骨膜反応(①→)で囲まれ、内部はほとんど造影されていないが、一部に造影される充実性部(②→)がみられる。図3c)のT₂強調MRI像では、腫瘍内部は多房性で、多数の液面形成(③→)が見られる。　 2.画像所見　骨巨細胞腫は、しばしば関節軟骨下に広く達し、骨端を侵すことが特徴とされている。しかし、成長軟骨閉鎖前に発生したものや、閉鎖後も早期に発見された小さなものは骨幹端に存在し、基本的には骨幹端より発生する腫瘍と考えられる。　単純X線像(図1a,2a,3a)では、腫瘍内部に細胞間基質を生じないため、基本的に溶骨性の所見を呈する。吸収骨の辺縁は、比較的明瞭であるが骨硬化縁を伴う場合は少ない。大きなものは、波状の輪郭を呈する。隣接する骨皮質は、外側に膨張性に改築され、シェル状の骨膜反応像を呈する。波状の骨吸収辺縁野骨膜反応の結果、腫瘍内部にあたかも隔壁が存在するかのように見える。これを、soap-bubble appearance と言っている。　CT像(図1b,2b,3b)では、腫瘍内部に石灰化が含まれていないこと、皮質骨が薄いシェル状の骨に改築さえ腫瘍を覆っていることなどが確認できる。特に、扁平骨や椎体の腫瘍において、これらの所見を診断するためにCTは不可欠である。部分的に腫瘍が骨外に進展していることは、いままで30～50%認められるが、これは必ずしも悪性を示唆する所見ではない。　MRI像(図1c,2c,3c)では、腫瘍の内部構造がより明瞭に見られる。細胞成分にとんだ部分は、T₂強調画像にて高信号を呈しよく造影される。嚢胞、新旧の出血、壊死、線維化などの所見が混在している場合が多いが、その時にはそれぞれ特徴的なMRI像を示す。嚢胞成分はT₂強調画像にて高信号を呈し、血性の場合はT₁強調画像にて高信号を呈することがある。コメント　　　　：　各種の診断用画像と病理像との対比は比較的よくなされており、腫瘍の肉眼病理や病理組織像の特徴を反映するMRI像も得ることが出来る。病理組織像との対比により重要な所見が得られる。原論文１ Data source 1：骨巨細胞腫の画像と病理像青木　純、久保田　潤、徳永　真理、石坂　浩、遠藤　啓吾群馬大学医学部日獨医報　43(1),pp.89-96,1998 参考資料１ Reference 1：運動領域の腫瘍概説島津　晃、石田　俊武、山野　慶樹大阪市立大学医学部、川崎医科大学医学部腫瘍学系統概論　妹尾　亘明編南山堂 pp.314-334,1986 キーワード：骨巨細胞腫、骨破壊性腫瘍、画像診断、脛骨、肩甲骨、橈骨、骨腫瘍、単純X線像、CT像、MRI像分類コード：030102,030103,030106
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