脳死の核医学的診断

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作成： 1997/11/10 山本　和高データ番号　　　：030032 脳死の核医学的診断目的　　　　　　：局所脳血流イメージングによる脳死の診断放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：Tc-99m、I-123 応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　脳血流シンチグラフィでは、局所脳血流量に応じて脳内に放射能が集積する。脳死状態では脳内に血液が流れ無くなるので脳への放射能集積がまったく認められなくなる。脳死の判定には臨床症状がもっとも重要であるが、脳血流SPECTでは、脳内の状態をコントラストの良好な断層像として表示できるので第三者にもわかりやすく、脳死判定に有効な検査法である。詳細説明　　　　：　臓器移植でのみしか生きられない患者に対して、臓器移植が世界各国で実施されている。我が国では、腎臓・肝臓の移植が1995年に約400件実施されたと報告され、腎臓移植のうち、生体腎移植が70%前後、死体腎移植が30%前後、肝移植では生体肝移植のみが行われている。腎臓移植の対象となる透析患者は、1992年末の約124,000人から年々増加の傾向にある。また、このうち移植を希望する腎臓病患者は約半数と見られ、肝臓病の移植適応患者は年間約2,500人、心臓病患者は約500人と試算されている。このような状況から、死体からの移植が必要とされ、臓器移植のドナーにおいては、脳死がヒトの死と認定される必要がある。　脳死の判定に用いられている厚生省の基準(竹内基準)は、深い昏睡、自発呼吸の停止、瞳孔の散大、固定、脳幹反射の消失、平坦な脳波、以上の状態が6時間以上続いており、移植の担当医を除く複数の専門医の判定が必要とされる。しかし、脳死の判定基準は、世界各国でもまちまちである。また、それぞれの項目の判定は専門医以外には決してわかりやすいものではなく、脳波の30分間にわたる記録以外は客観的なデータとして保存、提示することが困難である。上記の補助判定基準以外に、補助検査として、CT,脳幹誘発反応および脳循環、脳血流検査がある。欧米ではこの脳血流検査を脳死判定基準に含めている国もある。ここでは、脳血流検査についてその有用性を明らかにしたい。　　Tc-99m ECD、Tc-99m HM-PAOまたはI-123 IMPを用いる脳血流シンチグラフィは、局所脳血流量を画像化することができ、脳梗塞などの診断に広く利用されているが、脳死の判定にも有用性が高いと考えられる。図1　脳血流SPECT像　a)健常者　b)脳死状態　c)植物状態（原論文1より引用）　図1a は健常者の脳血流SPECT像で、大脳の灰白質、基底核、小脳など血流の多い正常構造が明瞭に描出されている。脳死状態では、脳への血流は途絶してしまうので、脳内の放射能集積はまったく認められない(図1b)。ただ頭皮や頭蓋骨への血流は健常者では少ないので描出されないが、脳死状態になると頭皮や頭蓋骨には血流が若干残っているので相対的に明瞭に描出される。図1c は、いわゆる植物状態の患者の脳血流SPECT像で、左大脳半球、右前頭葉に広範な血流欠損を示しているが、右側頭葉には放射能集積が認められ、この部分には脳組織が生存して血流があることがわかり、脳死状態とは鑑別できる。　この検査は、厚生省の基準の判定方法とは異なり、ベッドサイドで実施することはできず、RI管理区域内で脳血流トレーサーを静注し、SPECT用ガンマカメラで30分程度の撮像をしなければならない。実際には、人工呼吸器や点滴静注用のカテーテルなどを装着した脳死状態の患者を移動して、脳血流SPECTを実施することは容易ではない。しかし、図1bのように脳死状態では脳内にまったく血流が無く放射能の集積が認められない特徴的な画像所見を示すので、その診断は簡単で、医師ばかりではなく患者の家族にも理解しやすいと思われる。また、この結果は画像データとして保存でき、いつでも提示することが可能である。脳血流SPECTは、臓器移植のドナーの脳死判定において、他の判定基準では得られない情報を提供する有用な検査である。コメント　　　　：　心臓死に比べて脳死の判定は容易ではない。患者の家族にも簡単に理解できるような、正確で客観的な脳死の判定法は重要である。このような意味において脳死の判定に脳血流SPECTを付加することは有意義と考えられる。脳死状態の患者にSPECTを実施することは大変困難な作業であり、この検査の頻度が増加するようであれば、ベッドサイドでも実施できるような新しい装置や方法の開発が必要となるであろう。原論文１ Data source 1：頭部外傷(植物状態)、脳死状態田中　徳彦、三森　研自、桜木　貢、白坂　智英北海道脳神経外科記念病院ニューロライト脳血流SPECTアトラス、監修:阿部　弘、古館　正従、㈱第一ラジオアイソトープ研究所、1994 参考資料１ Reference 1：脳死判定基準(竹内基準) 厚生省研究班、1985 キーワード：脳死、brain death、脳血流シンチグラフィ、brain perfusion scintigraphy、[N,N'-エチレンジ-L-システネート(3-)]オキソテクネチウム(Tc-99m),ジエチルエステル、Tc-99m-ECD，エキサメタジウムテクネチウム(Tc-99m)、Tc-99m-HM-PAO，塩酸N-イソプロピル-p-ヨードアンフェタミン(I-123)、I-123-IMP, シングルフォトンＣＴ，SPECT 分類コード：030301,030502
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