In-111オクトレオチドを用いる腫瘍イメージング

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作成： 1998/02/25 山本　和高データ番号　　　：030036 In-111オクトレオチドを用いる腫瘍イメージング目的　　　　　　：ソマトスタチン受容体を有する腫瘍に集積する¹¹¹In-オクトレオチドによる腫瘍検出放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：¹¹¹In 応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　¹¹¹In-オクトレオチド(¹¹¹In-DTPA-D-Phe-octreotide)はソマトスタチン受容体に結合する新しい種類の放射性医薬品で、消化管ホルモン産生腫瘍ばかりではなく、数多くの悪性腫瘍を比較的高率に陽性描画することが明かになってきており、従来の⁶⁷Ga-クエン酸よりも優れた腫瘍イメージング製剤として、臨床応用の拡大が期待される。詳細説明　　　　：　　ソマトスタチン(somatostatin)は、成長ホルモン分泌抑制因子として視床下部で最初に同定されたが、その後、中枢神経系、膵、胃、小腸などに広く存在し、それぞれの臓器機能に対し抑制的に作用するペプチドホルモンで、これらの臓器から発生する脳下垂体腫瘍、消化管ホルモン産生腫瘍などは、ソマトスタチン受容体を高密度に有していることが知られている。オクトレオチド(octreotide)はソマトスタチンの誘導体で、消化管ホルモン産生腫瘍や下垂体腺腫などによる症状の改善等に、治療薬として利用されている。これらのソマトスタチン受容体を有する腫瘍のイメージングを目的として¹¹¹In-オクトレオチドが利用されるようになった。　 1)検査法　¹¹¹In-オクトレオチド　111MBq(3mCi)を静注する。中エネルギー用コリメータを装着したガンマカメラを用いて投与4時間後および24時間後に局所および全身像を撮像する。また、SPECTも実施するのが望ましく、特に、肝、腎、脾などの生理的集積と、その近傍に存在する腫瘤の鑑別には不可欠である。24時間累積尿中排泄量は約70%と尿中排泄率が高いので、全身像や骨盤部の撮像は排尿後に行うべきである。24時間後には少しではあるが腸管内に放射能が排泄されるので、腹部の病巣の正確な診断には下剤投与などの前処置が必要な場合もある。なお、全身の実効線量当量は3.26±0.43mSv/37MBqで、腫瘍シンチグラフィに用いられている⁶⁷Ga-クエン酸(4.4mSv/37MBq)より低値であった。　 2)腫瘍シンチグラフィ　カルチノイドの症例の全身シンチグラムを図1に示す。図1　カルチノイドの症例の投与4時間後の全身シンチグラム（原論文1より引用）　肝臓、腎臓、脾臓及び膀胱内の放射能は生理的集積である。左肩、左肺門部、左腰部、腰椎、左そけい部等に異常集積が認められる。肝は肥大し、この図ではわかりにくいが、肝内にも多数の異常集積が見られ、カルチノイドの全身的な転移病巣を容易に評価することができる。　図2はガストリノーマ症例の上腹部の投与24時間後のSPECT像を示す。図2　ガストリノーマ症例の投与24時間後のSPECT像。（原論文1より引用）　左上から番号順に肝臓の横断層像を頭部側より下にスライス状に撮って並べた。X線CTでは、一部の病巣しか指摘できなかったが、図2では肝内に散在する転移病巣が8個のhot　spotとして描出されている。　このように消化管ホルモン産生腫瘍の¹¹¹In-オクトレオチドによる検出率は一般に80～100%と良好で、異常集積が認められた部位を、X線CT等で検査しても直後には異常所見が描出されなかったが、経過観察により局所に病変が認められるようになった症例も報告されている。腫瘍の存在は下痢、腹痛、低血糖症状など、それぞれの消化管ホルモンの過剰分泌に伴う症状、血中ホルモン値の異常増加により診断されるが、腫瘤の部位診断は容易ではないことが多く、特に、従来の画像検査法では全身的な検索はほとんど不可能であった。　　消化管ホルモン産生腫瘍は、いずれも発生頻度はかなり希な疾患であるが、¹¹¹In-オクトレオチドは、それ以外にも、ソマトスタチン受容体を有する数多くの腫瘍を陽性に描画する。脳下垂体腺腫、褐色細胞腫、神経芽細胞腫、傍神経節細胞腫、甲状腺髄様癌、メルケル細胞癌、肺小細胞癌といった神経内分泌細胞由来の腫瘍は、ほとんどが陽性に描出される。　　褐色細胞腫や神経芽細胞腫のイメージングには¹²³I-MIBGが利用されるが、¹¹¹In-オクトレオチドの描出率は¹²³I-MIBGと同程度ないし、より良好であったと報告されている。また、乳癌、悪性リンパ腫、髄膜腫、非小細胞性肺癌などでも¹¹¹In-オクトレオチドの集積が報告されている。⁶⁷Ga-クエン酸よりも多くの種類の悪性腫瘍を、より高率に陽性描画できる優れた腫瘍イメージング製剤ととして臨床利用できるようになることが期待される。さらに、白血球にもソマトスタチン受容体が発現し、サルコイドーシス、結核、リューマチ性関節炎、バセドウ病などの良性疾患の病巣へも¹¹¹In-オクトレオチドは集積を示すので、悪性腫瘍との鑑別においては大きな問題となるが、これらの自己免疫疾患や炎症性疾患の病態の評価にも応用できる可能性がある。　　 3)治療への応用　標識に用いる放射性核種を¹¹¹Inからβ線を放出する比較的半減期の長い核種に変更した放射性医薬品を開発することにより、RI内部照射療法への応用が研究されている。生理的集積の多い臓器、特に、腎の放射線性障害が問題となるが、それを軽減する研究が進められており、将来的には腫瘍が全身に転移している患者に対しても治療が可能になると期待される。　コメント　　　　：　日本においては¹¹¹In-オクトレオチドの臨床適応はまだ認められていない。消化管ホルモン産生腫瘍以外にも、もっと頻度の高い肺癌や乳癌など数多くの腫瘍の描出にも有用であることが知られている。病巣の存在を全身的に簡単に評価できるのは核医学検査の特徴であり、¹¹¹In-オクトレオチドが集積する腫瘍に対しては、いずれも臨床適応が認められるようになることが望まれる。　原論文１ Data source 1： ¹¹¹In-DTPA-D-Phe-octreotideの消化管ホルモン産生腫瘍を対象とした第Ⅲ相臨床試験山本　和高、他30名(治験総括班員) 福井医科大学、他20機関(班員所属機関) 核医学 32(11), pp.1269-1280, 1995 参考資料１ Reference 1： ¹¹¹In-DTPA-D-Phe-octreotideの安全性、薬物動態、被曝線量の検討－第1相臨床試験報告－井上　登美夫、大竹　英則、平野　恒夫、冨吉　勝美、遠藤　啓吾、田中　孝司、清水　直容、斉藤　達雄群馬大学医学部、帝京大医学部、佐々木研究所附属杏雲堂病院核医学32(5), pp.511-521, 1995 参考資料２ Reference 2： Somatostatin receptor scintigraphy Krenning EP, et al Nuclear Medicine Annual 1995 キーワード：In-111オクトレオチド, In-111 DTPA-D-Phe-octreotide,ソマトスタチン受容体,somatostatin receptor,消化管ホルモン産生腫瘍, gastrointestinal hormon producing tumors,カルチノイド, carcinoid,ガストリノーマ, gastrinoma 分類コード：030301,030502,
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