腎盂癌・尿管癌の放射線治療

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作成： 1998/03/12 荒木　仁データ番号　　　：030052 腎盂癌・尿管癌の放射線治療目的　　　　　　：腎盂癌・尿管癌の放射線治療方法の紹介放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：直線加速器応用分野　　　　：医学、治療概要　　　　　　：　腎盂癌・尿管癌は初発症状として、血尿、側腹部痛などで発見されることが多く、リンパ節転移がしばしばみられることなどから予後不良とていされる。これらの癌の治療は、原則として手術で行われ、病気がある患側の腎臓・尿管全摘が基本である。放射線治療は術後照射として行われるのが一般的である。手術で腫瘍が全摘できた場合、患側の腎臓と尿管の存在範囲および傍大動脈リンパ節に50Gy 前後照射する。詳細説明　　　　：　腎盂癌・尿管癌は、腎臓と膀胱を連絡する尿の通路となる尿管と、腎臓の尿管開口部にあたる腎盂を原発とする悪性腫瘍である。腎盂は腎臓の一部であるが、粘膜の組織は腎臓の大部分を占める腎細胞ではなく、膀胱や尿管と同じく移行上皮である。このため、腎盂癌は腎癌とは区別される、また尿管癌と類似した性質をもつことから、腎盂癌・尿管癌と総称されることが多い。図1に腎盂癌・尿管癌の部位を示す模型と静脈性腎盂造影像(Intravenous Pyelography-IVP)を示す。図1　腎盂癌・尿管癌の部位および造影像　a)部位を示す模型　　b)静脈性腎盂造影像(原論文１より引用) 　図1a)に示すように、左右の腎臓からでた尿は、腎杯から腎盂次にはこれにつながっている尿管へと排出され膀胱に貯まる。腎盂、尿管と膀胱、尿道の一部は、移行上皮と呼ばれる粘膜で構成されている。1b)のIVP像は、経静脈的に急速に造影剤を注入した後、排泄経過を観測したもので、腎実質、腎盂、腎杯、尿管、膀胱の形態が明瞭にわかる。　１．腎盂癌、尿管癌の特徴　腎盂癌、尿管癌も多くは移行上皮癌であり、ともに泌尿器科領域では比較的まれな疾患である。これらの癌患者の性別では男性に多くみられ、とくに50～70歳代に多い。また、アニリンの使用を伴う染料作業従事者など、特定の化学物質の環境下での職業的発生率が高いとの報告がある。初診時に病巣が複数みられること(多中心性)がしばしばあり、解剖学的特徴から比較的容易にリンパ節転移がおきることなどから予後不良な疾患である。多中心性の腎盂癌・尿管癌は、治療前、あるいは治療後に膀胱病変がしばしば認められ、また、膀胱癌の治療後に腎盂あるいは尿管病変を認めることもある。　２．症状　腎盂癌・尿管癌は初発症状として、血尿、側腹部痛などで発見されることが多い。検査としては、尿細胞診、尿路造影、膀胱鏡や腎盂尿管内視鏡による観察と生検、CT、ガリウムシンチなどを行い、病変の存在範囲、深達度、周囲への浸潤、リンパ節などへの転移の有無を診断する。腎盂癌・尿管癌の病期は、腫瘍性状の所見(Ｔ)で表し、腫瘍の壁内深達度(０－４)に分類されている。T1は粘膜固有層間での浸潤、T2は筋層までの浸潤、T3は筋層を越えて尿管周囲あるいは腎盂周囲脂肪組織または腎実質に及ぶ浸潤、T4は隣接臓器への浸潤、または腎を越えて腎周囲脂肪組織におよぶ浸潤とされている。病期が進行するほど予後不良である。　３．治療　治療は原則として手術により、病気がある患側の腎臓・尿管全摘が基本である。放射線治療は術後照射として行われるのが一般的である。放射線治療に先立ち、それまでの検査所見、手術所見を参考に、放射線をあてる場所を決める作業(シミュレーション)を行う。これにより皮膚に照射範囲を示す線(マーク)を描くことになる。この線は照射期間中、消えることのないように注意が必要である。このシミュレーション作業の後に放射線治療を行う。治療台の上でマークされた範囲に正確に照射されるように体の位置をあわせてから放射線を照射する。　図2に、血尿の自覚症状により検査を受けに来た患者の造影CT像および腎動態シンチグラムを示す。図2　腎盂腫瘍患者の症例　　a)造影CT像　　b)腎動態シンチグラム：2秒後の血流相イメージ（原論文2より引用）　IVPおよび造影CT検査(図2a)から、腎盂腫瘍(→)が指摘された。シンチグラム(図2b)から、右腎への血流が全体的に低下し(→)、特に極上から下内側で低下が顕著である。最終的には、腎盂から腎実質内に浸潤する扁平上皮癌と診断された。　４．放射線照射　　手術で腫瘍が全摘できた場合、患側の腎臓と尿管の存在範囲および傍大動脈リンパ節に50Gy 前後照射する。50Gyの場合、1回2Gy、週5回法で連日照射し5週間の治療となる。1回の治療時間は5～10分程度である。　放射線治療の副作用としては、下痢、軟便、悪心、嘔吐などがある。下痢がみられた場合は止痢剤を、悪心、嘔吐には制吐剤を傾向剤あるいは座薬で症状をみながら必要に応じて用いる。コメント　　　　：　腎盂癌・尿管癌が筋層を越えて尿管周囲あるいは腎盂周囲脂肪組織または腎実質に及ぶ浸潤が起こったり、隣接臓器への浸潤、または腎を越えて腎周囲脂肪組織におよぶ浸潤が起こっている進行例については化学療法が主体になり、放射線照射は行わない。原論文１ Data source 1：第6章　X線撮影技術　Ⅱ．造影撮影法　{5}泌尿器・生殖器系造影法花山　正行大阪大学医学部附属病院放射線部診療放射線技術　上巻(改訂第9版)、監修:立入　弘、稲邑　清也、編集:山下　一也、速水　昭宗、, pp.187-189, 1996 ，南江堂原論文２ Data source 2：第２章　各論　５　腎内腫瘤性病変宮崎　知保子市立札幌病院画像診療科臨床腎臓核医学　監修　玉木　長良、pp.99-116，1997，第一ラジオアイソトープ研究所㈱発行キーワード：放射線治療、radiotherapy,腎盂癌、renal tumor,尿管癌、ureteral tumor,術後照射、postoperative irradiation,分割照射、split irradiation,副作用、side effects 分類コード：030201,030402,030602
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