代謝性骨疾患の画像診断

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作成： 1999/03/22 遠藤　啓吾データ番号　　　：030055 代謝性骨疾患の画像診断目的　　　　　　：代謝性骨疾患の特徴の紹介放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：X線管応用分野　　　　：医学、診断、治療概要　　　　　　：　代謝性骨疾患には、骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症、腎性骨異栄養症などがあり、X線撮影等においては病態に応じた多種多様な画像を提供する。骨粗鬆症、骨軟化症、くる病について、病理組織像、単純X線像、場合によってはMRI像を示す。骨粗鬆症では、骨梁の減少や皮質骨の菲薄化が進むと、やがて骨の変形や骨折をきたし、骨軟化症、くる病では、骨基質の石灰化が阻害され、類骨が過剰となる。詳細説明　　　　：　正常な成人の骨量や骨構造は、骨形成と骨吸収のバランス上に保たれている。このバランスを保つ骨代謝の調節は多種のホルモン、各種成長因子が複雑に関連した機構で行われており、この調節以上が代謝性骨疾患の原因となっている。本疾患の多くは、骨量減少を来すことから、この画像診断は骨量減少と骨折の鑑別が主となっている。骨診断の基本は、単純X線像であるが、最近軟部組織のコントラストの優CT,MRさらに骨シンチグラフィなどの発展により、有用な情報が多く得られるようになった。　代謝性骨疾患には、骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症、腎性骨異栄養症などがあり、X線撮影等においては病態に応じた多種多様な画像を提供する。ここでは、その代表例について病理組織像、単純X線像、場合によってはMRI像を紹介する。　 1.骨粗鬆症の診断　本症は、最も頻度の高い代謝性骨疾患である。骨量が生理的範囲を越えて減少、その結果病的骨折が起こる。図1に、骨粗鬆症の診断例を示す。図1　骨粗鬆症の診断　a)病理組織像　b)腰椎X線像　c)腰椎T1強調MRI像（原論文1より引用）　図1a)の病理組織像において、全体に骨梁が減少し特に横方向の骨梁(①→)がほとんど消失している。また、転子間に骨折(②→)が認められる。骨梁の減少や皮質骨の菲薄化が進むと、やがて骨の変形や骨折を来すことになる。図1b)に、腰椎の単純X線像で第1(①→)、第2(②→)腰椎椎体に扁平化がみられる例を示す。また図1c)の腰椎T1強調MRI像では、脂肪髄が保たれ(②→)ているが、第1腰椎椎体内には横走する骨折線(①→)が認められる。本症では、脂肪髄がよく保たれていることから、悪性腫瘍による病的骨折でないことがわかる。　骨量の減少をX線像上の濃淡変化として認識するためには、腰椎の60%以上の脱灰が必要であると言われている。ここに精度の高い骨塩定量法の有効性が認められる。　 2.骨軟化症、くる病の診断　本症の最終的な病的形態変化は、骨基質の石灰化が阻害され、類骨が過剰となるものである。骨軟化症は成人における病態であり、骨リモデリングにおける膜内骨化の石灰化生涯である。くる病は成長期に見られるもので、成長軟骨における軟骨内骨化の生涯が主要な変化である。図2に、骨軟化症(低リン血症性くる病)、くる病の診断画像を示す。図2　くる病の診断　a)骨軟化症(低リン血症性くる病)　b)病理組織像　c)膝単純X線像（原論文1より引用）　図2a)は、骨軟化症(低リン血症性くる病)の下腿X線像であり、脛骨と腓骨の遠位部が湾曲し(①→)、脛骨にはLooser's zone(②→)が認められる。本症は、進行例で骨の強度が減衰し、長管骨の湾曲が生じたものであり不全骨折が起ったのち類骨性仮骨で満たされたため幅広い骨折線が観測されたものである。図2b)は、くる病の病理組織像で、成長軟骨が厚く(①→)、骨端や骨幹端の新生骨梁(②→)は微弱である。これは予備石灰化層における石灰化が阻害され、肥大細胞層内の軟骨組織が増加したためであるとともに、石灰化軟骨基質は弱く付加された骨基質も十分な石灰化が起こらないため一次海綿骨が微弱であることによる。図2c)は、くる病(ファンコニ症候群)の膝骨X線像である。大腿骨、脛骨、腓骨の成長軟骨が厚く、予備石灰化層が不鮮明となっている。これは骨端中央部が盃状に陥没(①→)し、骨幹端辺縁部では、成長軟骨を包むように膜性骨が形成される(②→)ことによる。　このように代謝性骨疾患の単純X線像は、病理組織の形態変化をよく反映し、特徴をもよく示している。しかしこれらの変化をX線像で認められるのは病変の後期であることから、重症度の評価やたの全身性骨疾患との鑑別に役立っている。コメント　　　　：　Ｘ線像は、代謝性骨疾患の診断にも有用である。ここでは、骨シンチグラフィについては、言及しなかったがシンチグラフィは、骨転移の検出など局所病変の評価に最適である、しかし骨代謝の亢進にともなって全身の骨へRIの集積が起こることからその集積パターンが疾患特有の像を示すことから代謝性骨疾患の場合にも用いられる。　骨密度測定も骨量減少の診断と治療後の効果判定に欠くことのできない手段である。本方法については、別の要素データを参照されることを推奨する。原論文１ Data source 1：代謝性骨疾患のマクロ病理像とX線像の成り立ち青木　純、石嶋　秀行、茂木　孝夫、石坂　浩、遠藤　啓吾群馬大学医学部季刊　腎と骨代謝 10(3),pp.235-243,1997 参考資料１ Reference 1：序説森田　陸司滋賀医科大学放射線医学講座季刊　腎と骨代謝 10(3),pp.229-233,1997 キーワード：代謝性骨疾患、metabolic bone disease、単純X線像、plain rentogenogram、病理組織像、pathological tissue、磁気共鳴断層像、magnetic resonance imaging、骨粗鬆症、osteoporosis、骨軟化症、osteomalacia、くる病、rickets 分類コード：030103,030401
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