肺換気・肺血流シンチグラフィー用診断剤：クリプトン(Kr-81m)ジェネレータ

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作成： 1997/10/12 鷲野弘明データ番号　　　：030067 肺換気・肺血流シンチグラフィー用診断剤：クリプトン(Kr-81m)ジェネレータ目的　　　　　　：クリプトン(⁸¹^mKr)ジェネレータの特徴の説明放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：⁸¹^mKr 応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　クリプトン(⁸¹^mKr)ジェネレータは、サイクロトロンで生産されたルビジウム-81(⁸¹Rb)よりβ⁺壊変あるいは軌道電子捕獲で生成する⁸¹^mKrを溶出する装置である。⁸¹^mKr注射液や⁸¹^mKr吸入用ガスが必要なとき、注射用水や加湿空気をこの装置に通じ、それらを調製できる。⁸¹^mKrは、半減期が極めて短いため持続投与が可能であり、局所肺換気機能・局所肺血流・局所脳血流などの画像診断に使用される。詳細説明　　　　：　クリプトン(⁸¹^mKr)ジェネレータ(以下⁸¹^mKr-ジェネレータ)は、サイクロトロンで生産されたルビジウム-81(⁸¹Rb)を保持したカラム、これにクリプトン-81m(⁸¹^mKr)を溶出する装置及び放射線遮蔽材を合わせた装置である。⁸¹^mKr注射液あるいは⁸¹^mKr吸入用ガスが必要なとき、注射用水や加湿した空気などをこの装置に通じることにより、それらを調製できる。 ⁸¹Rbは、物理的半減期4.58時間でβ⁺壊変あるいは軌道電子捕獲(EC)により⁸¹^mKrを生成する。⁸¹^mKrは、物理的半減期13秒で⁸¹Krとなり、この過程で画像診断に適した190KeVのγ線を放出する。　　　　　　　　　　　β⁺, EC 　　　　　　IT 　　　　　　 ⁸¹Rb ――――――→ ⁸¹^mKr ――――――→ ⁸¹Kr 　　　　　　　　　　T1/2 = 4.58 hr　　　　T1/2 = 13 sec ⁸¹^mKrは、半減期が極めて短いため持続投与が可能であり、多方向検査・負荷検査ができる。本剤は、局所肺換気機能・局所肺血流・局所脳血流などの画像診断に使用される。 1. ⁸¹^mKr-ジェネレータの構造及び溶出特性　図1に⁸¹^mKr-ジェネレータの構造及び⁸¹^mKrを溶出するときの方法を示す。図1　⁸¹^mKrジェネレータの構造及び溶出時の接続方法（原論文1より引用）　ジェネレータ部は、⁸¹Rbを水酸化ルビジウムの形で吸着させた陽イオン交換樹脂を充填したプラスチックカラムと、これに⁸¹^mKrガスを注射液あるいは吸入用ガスとして溶出するために必要なフラッシングラインと、その周りの被曝を防止するための鉛製放射線遮蔽材から構成されている。注射液用⁸¹^mKrを溶出する場合、溶出剤として5 w/v%ブドウ糖注射液や注射用水などの非電解質注射液を通し、吸入用ガス⁸¹^mKrの場合、加湿した酸素ガスまたは空気をジェネレータに通じることにより、各々⁸¹^mKr注射液あるいは⁸¹^mKr吸入用ガスを調製することが出来る。 ⁸¹^mKr-ジェネレータに気体を通じたときの⁸¹^mKrの溶出特性を、気体流量と溶出放射能濃度の関係として図2に示す。流量が0.1 l/分以上になると、最初の１秒には高放射能濃度で溶出するが、それ以降は定常濃度で溶出する。図2　気体の各流速における⁸¹^mKrの溶出放射能濃度（原論文1より引用） 2. ⁸¹^mKr吸入用ガス・注射液の効能効果　本剤は、以下の三通りの検査に使用されるが、今日では肺を対象とした検査以外で使用されることは少ない。 ①⁸¹^mKr吸入用ガスの吸入による局所肺換気機能検査 ②⁸¹^mKr注射液の静脈内投与による局所肺血流検査 ③⁸¹^mKr注射液の頚動脈内投与による局所脳血流検査 3. ⁸¹^mKr吸入用ガス・注射液の用法及び用量 3-1. 局所肺換気機能検査 (1) 持続吸入法　0.3～3 l/分の流速で⁸¹^mKr吸入用ガスを溶出しつつ患者に必要な時間吸入させ、肺換気シンチグラムをとる。 (2) ボーラス吸入法　10～20 mlの溶出剤を急速に加圧導入して溶出する⁸¹^mKr吸入用ガスを患者に吸入させ、肺換気シンチグラムをとる。 3-2. 局所肺血流検査 (1) 持続静注法　0.3～3 ml/秒の流速で⁸¹^mKr注射液を溶出しつつ患者の肘静脈より必要な時間投与し、肺血流シンチグラムをとる。 (2) ボーラス静注法　5～10 mlの溶出剤を急速に加圧導入して溶出する⁸¹^mKr注射液を患者の肘静脈より投与し、肺血流シンチグラムをとる。 3-3. 局所脳血流検査　7.5～15 ml/分の流速で⁸¹^mKr注射液を溶出しつつ患者の頚動脈より投与し、脳血流シンチグラムをとる。 4. ⁸¹^mKr吸入用ガス・注射液の薬効薬理 (1) 局所肺換気機能・局所肺血流検査　⁸¹^mKrガスは、吸入により肺内部に到達しても血液中にほとんど移行せず、肺胞内に留まる。そのため、肺局所の⁸¹^mKr分布は、その部分の呼吸状態を反映する。一方、静脈内投与された⁸¹^mKrは、心臓の右心系で混和された後肺動脈にのって肺胞壁毛細血管に分布し、その大部分が肺胞内へ移行する。肺局所に分布する⁸¹^mKrの量はその部分への肺動脈血流量に比例し、また、この部分からの⁸¹^mKrガスの消失速度はその局所換気状態を反映する。 (2) 局所脳血流検査　一定濃度の⁸¹^mKrを頚動脈に持続注入すると、⁸¹^mKrは血液脳関門を通過して末梢脳組織に達し、局所脳血流量にほぼ比例して分布する。 5. ⁸¹^mKr吸入用ガス・注射液の体内薬物動態 (1) 局所肺換気機能・局所肺血流検査　血中⁸¹^mKr濃度は、投与開始後速やかに上昇し、静脈内投与の場合約24秒で最高値に達し、投与継続中はこの水準を維持する。血中放射能濃度は、投与中止後初期半減期約9秒、後期半減期約13秒の二相性で減少する。後期半減期が物理的半減期と一致することより、初期相で血中⁸¹^mKrは消失し、後期相では全身に分布した⁸¹^mKrが血中⁸¹^mKrと平衡を維持しながら物理的に減衰すると考えられる。吸入の場合、血中⁸¹^mKr濃度は約15秒で最高値に達する。 (2) 局所脳血流検査　頚動脈内に投与された⁸¹^mKrは、直ちに脳に移行する。脳内放射能濃度は、投与開始後2分で平衡に達し、投与継続中この水準を維持し、中止後は半減期約13秒で速やかに減少する。これは、⁸¹^mKrの血流による消失が⁸¹^mKrの物理的半減期に比べて無視しうることを示す。ゆえに、平衡時における脳局所の⁸¹^mKr放射能濃度はその部位の脳血流量の指標となり得ることが示唆される。 6. ⁸¹^mKr吸入用ガス・注射液の臨床適用 (1) 肺換気シンチグラフィー　⁸¹^mKr吸入用ガスの吸入による局所肺換気分布及び各種負荷前後の肺換気変化の観察を行う。安静呼吸法(SP)に加えてRVボーラス・FRCボーラス・VC吸入法などを併用することにより、慢性閉塞性肺病変の程度・広がりが把握できる。図3にその臨床例を示す。図3　慢性閉塞性肺病変患者に対する吸入法の違いと肺換気機能シンチグラフィー（原論文1より引用）　この症例は45歳の男性の場合であり、SP・VC吸入法では、左下肺野への吸入減少が見られるが、はっきりした欠損は認められない。RVボーラス吸入の場合、左下肺野に大きい吸入欠損が認められるが、FRCボーラス吸入では、洗い出し遅延部に一致して換気不全部が明瞭に描出されている。 (2) 肺血流シンチグラフィー　⁸¹^mKr注射液の肘静脈内投与による局所肺血流分布及び各種負荷前後の肺血流変化を観察する。 (3) 脳血流シンチグラフィー　⁸¹^mKr注射液の頚動脈内投与による局所肺血流分布及び各種負荷前後の肺血流変化を観察する。　 7. ⁸¹^mKr吸入用ガス・注射液の副作用　現在にいたるまで、特に報告されていない。コメント　　　　：　肺換気シンチグラフィ用RIとして、⁸¹^mKr以外に放射性ガス・エアロゾルが用いられるが、⁸¹^mKrの13秒という短半減期は、被検者の被曝線量低減に有効であり、医師などの被曝や検査室・環境の汚染が少ないという利点を持つ。原論文１ Data source 1：クリプトン(⁸¹^mKr)ジェネレータ日本メジフィジックス株式会社販促パンフレット(平成元年12月改訂) 参考資料１ Reference 1：放射性医薬品基準クリプトン(⁸¹^mKr)ジェネレータ (社) 日本アイソトープ協会インビボ放射性医薬品添付文書集(平成7年), p. 90-91, (平成 8年)，p.76-77．キーワード：画像診断, 放射性医薬品, クリプトン(Kr-81m)ジェネレータ, 肺, 局所肺換気, 局所肺血流, 脳, 局所脳血流, diagnostic imaging, radiopharmaceutical, Krypton(Kr-81m) generator, lung, local lung ventilation, local pulmonary blood flow, brain, local cerebral blood flow 分類コード：030502, 030301, 030403
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