過テクネチウム酸ナトリウム(Tc-99m)注射液ジェネレータ

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作成： 1997/10/12 鷲野　弘明データ番号　　　：030068 過テクネチウム酸ナトリウム(Tc-99m)注射液ジェネレータ目的　　　　　　：過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)注射液ジェネレータの特徴の説明放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：⁹⁹^mTc 応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)注射液ジェネレータは、モリブデン酸塩(⁹⁹Mo)を保持したカラムを内蔵し、生理食塩液で過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)注射液を溶出・調製する装置である。⁹⁹Moは、β^-壊変し⁹⁹Tcとなる過程で⁹⁹^mTcを生成し、⁹⁹Moと⁹⁹^mTcは過渡平衡にあるため、⁹⁹^mTc-ジェネレータより数日にわたって繰り返し⁹⁹^mTcO₄^-注射液を得ることができる。詳細説明　　　　：　　過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)注射液ジェネレータ(以下⁹⁹^mTc-ジェネレータ)は、原子炉で生産されたモリブデン酸塩(⁹⁹Mo)を保持したガラスカラムに、これに過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)注射液(以下⁹⁹^mTcO₄^-注射液)を溶出する装置及び放射線遮蔽材を組合わせた装置である。⁹⁹^mTcO₄^-注射液が必要なとき、生理食塩液をこの装置に通じることにより、⁹⁹^mTcO₄^-注射液を調製できる。　⁹⁹Moは、物理的半減期65.9時間でβ^-壊変し⁹⁹Tcを生成するが、その過程で準安定状態にある⁹⁹^mTcも生成する。この核種は、物理的半減期6.01時間で⁹⁹Tcとなる。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　β^- 　　　　　　　　　　IT　　　　　　　　　　　　　　⁹⁹Mo ―――――――→　⁹⁹^mTc　―――――――→ ⁹⁹Tc 　　　　　　　　T1/2 = 65.6 hr 　　　　　　T1/2=6.01 hr 　我国では3社がこの⁹⁹^mTc-ジェネレータを製造販売している(シーアイエスデイ：エルマテックⅢ、第一ラジオアイソトープ研究所：ウルトラテクネカウ、日本メジフィジックス：メジテック)、ここではそのうちの一つ(メジテック)を例に説明する。 1.⁹⁹^mTc-ジェネレータの構造　　図1に⁹⁹^mTc-ジェネレータの構造及び⁹⁹^mTcO₄^-注射液を溶出するときの様子をカットモデルで示す。この製品は、モリブデン酸塩(⁹⁹Mo)を吸着したアルミナカラム、⁹⁹^mTcO₄^-注射液溶出に必要なフラッシングライン及び不必要な被曝を防止する鉛やタングステン製放射線遮蔽材から構成される。上部には2個のガラスバイアルが刺さっており、左側が生理食塩液バイアル、右側がバイアルシールドに入った真空バイアルである。先に生理食塩液バイアルを⁹⁹^mTc-ジェネレータの左側ニードルに刺し込み、次に真空バイアルを右側ニードルに差し込むと、左の生理食塩液は真空に引かれてライン～アルミナカラム～メンブランフィルターを通って右のバイアルに流れ込むこの過程で⁹⁹^mTcO₄^-注射液が溶出される。図1　⁹⁹^mTc-ジェネレータの構造（原論文1より引用） 2.⁹⁹^mTc-ジェネレータの溶出特性　　⁹⁹^mTc-ジェネレータから⁹⁹^mTcO₄^-放射能が溶出される様子(溶出曲線)を図2aに示す。溶出可能な放射能は、最初の4 mlでほとんど溶出される。5 mlの生理食塩液が装置を通過するのにかかる時間は約20秒である。図2bで示すように⁹⁹^mTcは時間の増加とともに生成し、⁹⁹Moと⁹⁹^mTcは24時間程度で過渡平衡状態に達するため、⁹⁹^mTc-ジェネレータを1日1回生理食塩液でフラッシング(ミルキング)することにより、数日にわたって⁹⁹^mTcO₄^-注射液を得ることができる。また、⁹⁹^mTc-ジェネレータより溶出される⁹⁹^mTc放射能量は、⁹⁹Moの減衰(壊変)とともに減少する。検定日時では、その時の放射能量を表示する。図2　溶出特性と溶出可能放射能量： a)⁹⁹^mTc-ジェネレータの⁹⁹^mTcO₄^-注射液溶出特性曲線，b)⁹⁹Moの減衰(壊変)と溶出可能な⁹⁹^mTc放射能量の関係（原論文1より引用） 3.⁹⁹^mTcO₄^-注射液の組成　　⁹⁹^mTc-ジェネレータより溶出される⁹⁹^mTcO₄^-注射液は、⁹⁹^mTcを過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)の形で含む。注射液の組成や特徴は、表1に示した。表1　過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)注射液の組成・性状（原論文1より引用） ---------------------------------------------------- 組成　　溶出される過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)注射液　　　　　925MBq, 1.85GBq, 2.78GBq, 3.7GBq, 5.55GBq, 7.4GBq, 11.1GBq (検定日時において) ---------------------------------------------------- 性状　　無色澄明の液ｐＨ　　 4.5～7.0 浸透圧比約 1(0.9 %塩化ナトリウム溶液に対する比) ---------------------------------------------------- 4.⁹⁹^mTcO₄^-注射液の薬効薬理　　⁹⁹^mTcO₄^-は血液脳関門を通過しないため、脳実質には集積しない。しかし、脳腫瘍のように血液脳関門が障害された部位には移行・分布し、その領域がホットスポットとして描出される。また、⁹⁹^mTcO₄^-は、組織血管床・血液量の増加、血管透過性の亢進、細胞外液腔の増大などにより病的組織の間質に分布するが、さらに受動拡散、pinocytosis、能動輸送系により、細胞固有の代謝と関連して細胞内に移行する。　　 5.⁹⁹^mTcO₄^-注射液の効能効果　　⁹⁹^mTcO₄^-注射液をそのまま用いるとき、脳腫瘍及び脳血管障害の診断、甲状腺疾患の診断、唾液腺疾患の診断、異所性胃粘膜疾患の診断に有用である。　　 6.⁹⁹^mTcO₄^-注射液の体内薬物動態　　⁹⁹^mTcO₄^-は、静脈内投与後速やかに血中から消失し、甲状腺、唾液腺、胃粘膜に特異的に集積する。その後、腎尿路系及び肝胆道系の二経路で体外に排泄される。投与1日後の尿中排泄率は約30 %で、それ以降の尿中排泄はわずかである。一方、糞中排泄は1日後より次第に増え始め、投与8日後で糞中排泄率は約60 %となる。　　 7.⁹⁹^mTcO₄^-注射液の臨床適用　　⁹⁹^mTcO₄^-注射液をそのまま投与するとき、次の疾患の診断に有用である：脳腫瘍(髄膜腫、神経膠芽細胞腫、転移性腫瘍など)、脳血管障害(脳動静脈奇形、硬膜下血腫など)、甲状腺疾患(甲状腺機能亢進症、び漫性甲状腺腫、結節性甲状腺腫、甲状腺腫瘍など)、唾液腺疾患(シェーグレン症候群、唾液腺腫瘍など)、異所性胃粘膜疾患(メッケル憩室など)。　　 8.⁹⁹^mTcO₄^-注射液の副作用　　特に報告されていない。コメント　　　　：　今日、⁹⁹^mTcO₄^-注射液はそのまま投与されることは少なく、ほとんど⁹⁹^mTc標識用キットと組み合わせ、⁹⁹^mTc標識診断剤を用時調製し使用される方が多い。このような例として、以下の診断剤があげられる。 ① 脳疾患診断剤：⁹⁹^mTc-ECD ② 心疾患診断剤：⁹⁹^mTc-MIBI, ⁹⁹^mTc-pyrophosphate, ⁹⁹^mTc-albumin ③ 肝疾患診断剤：⁹⁹^mTc-phytate ④ 腎疾患診断剤：⁹⁹^mTc-MAG3, ⁹⁹^mTc-DMSA ⑤ 腫瘍診断剤：⁹⁹^mTc-MDP 原論文１ Data source 1：メジテック、放射性医薬品基準過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)注射液ジェネレータ日本メジフィジックス株式会社販促パンフレット(1996年11月改訂) 参考資料１ Reference 1：放射性医薬品基準過テクネチウム酸ナトリウム(⁹⁹^mTc)注射液ジェネレータ (社) 日本アイソトープ協会インビボ放射性医薬品添付文書集(平成7年), p. 92-94,(平成８年),p.80-82 キーワード：放射性医薬品, 過テクネチウム酸ナトリウム(Tc-99m)注射液ジェネレータ, ミルキング, 脳血管障害, 甲状腺疾患, 唾液腺疾患, 胃粘膜疾患,画像診断 radiopharmaceutical, sodium pertechnetate(Tc-99m) generator, milking, cerebral blood flow disorder, thyroid disease, salivary gland disease, stomach disease,diagnostic imaging 分類コード：030502,030301,030102
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