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作成: 1999/01/04 鷲野 弘明

データ番号   :030101
脳血流シンチグラフィー用注射剤:Tc-99m-HMPAO注射液, Tc-99m-ECD注射液
目的      :エキサメタジムテクネチウム(99mTc)注射液などの特徴の説明
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :99mTc
応用分野    :医学、診断

概要      :
 99mTc-HMPAO注射液や99mTc-ECD注射液は、局所脳血流の診断に用いられる放射性医薬品である。これらの注射液は、静脈内に投与され、投与直後より大脳各領域にその血流量に応じて速やかに分布する。これをSPECT装置で撮像し、脳血流シンチグラムを得る。この画像より、脳梗塞や脳虚血に陥った領域を特定し、その血流状態を非侵襲的に診断することができる。脳血流シンチグラフィーは、X線CTでは検出困難な急性期脳梗塞の診断などに極めて有用である。

詳細説明    :
 
 エキサメタジムテクネチウム(99mTc)注射液(99mTc-HMPAO注射液)や[N,N'-エチレンジ-L-システイネート(3-)]オキソテクネチウム(99mTc)ジエチルエステル注射液(99mTc-ECD注射液)は、局所脳血流の評価を目的とする診断用放射性医薬品である。我が国では、この他にも塩酸N-イソプロピル-p-ヨードアンフェタミン(123I)注射液やキセノン(133Xe)吸入用ガスが脳血流の非侵襲的診断の目的で製造販売されている。99mTc-HMPAOと99mTc-ECDは、ほとんど同じ効能効果であるため、ここでは99mTc-HMPAOを例に説明する。
 
 99mTc-HMPAO注射液の有効成分は、血液脳関門を通過することを特徴とする。99mTc-HMPAOは、静脈内注射後局所脳血流に比例して速やかに脳内に分布し、しかも投与後早期に脳内分布が固定されるため、投与後短時間のうちに撮像可能となる。通常、SPECT装置で脳内各領域の放射能分布を画像化することにより、脳血流シンチグラムが得られる。この画像は、X線CTでは検出困難な急性期脳梗塞や様々な病態における局所脳血流障害の程度と広がりを示し、脳虚血・脳梗塞の診断及び治療効果の判定に極めて有用である。99mTc-HMPAOは標識用キット、また99mTc-ECDは標識用キット及び調製済みの注射液として流通している。注射液は、製造後有効期間30時間であるが、標識用キットは、緊急検査時にその場で注射液を調製(99mTc標識)して使用することができる。
 テクネチウム-99m(99mTc)は、原子炉で生産される99Moより生成する物理的半減期6.01時間の放射性核種で、β線を放出せず、放出γ線のエネルギーは140.5keVでシンチグラフィーに適している。
 
 
1. 99mTc-HMPAO注射液の調製
 
 HMPAO標識用キット中には、エキサメタジム0.5mg及び塩化第一スズ7.6μgが含まれる。標識用キットを冷蔵庫より取り出し室温に戻した後、過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液ジェネレータの溶出液5 mlを加えてよく振とうし、溶解させる。溶出液の放射能濃度は,あらかじめ370MBq〜1.11GBqの範囲に調整しておく。過テクネチウム酸は、溶解と同時に第一塩化スズによって還元されエキサメタジムとキレートを形成し、エキサメタジムテクネチウム(99mTc)となる。
 推定構造式を図1に示す。このようにして調製された99mTc-HMPAO注射液は、調製後30分以内に使用する。


図1 99mTc-HMPAOの推定化学構造式

 
2. 99mTc-HMPAO注射液の効能又は効果
 
 局所脳血流シンチグラフィー。
 
 
3. 99mTc-HMPAO注射液の用法及び用量
 
 通常、成人には99mTc-HMPAO注射液370〜740MBqを静脈内に注射し、投与5分後より被験部にガンマカメラなどの検出器を向けて撮像し、脳血流シンチグラムを得る。画像は、プラナー像よりSPECT装置を用いて2次元断層像として得た方が好ましい。投与量は、年齢・体重により適宜増減する。
 
 
4. 99mTc-HMPAO注射液の体内動態
 
 99mTc-HMPAOは、静脈内注射後急速に血液中より消失し、脳及びそれ以外の全身軟部組織に広く分布する。その後、全身からの排泄とともに緩やかな消失を示す。健常人による体内分布試験では、投与後48時間までに投与量の約40%が尿中に排泄され、また、投与量の約30%は、肝胆道系に移行し、腸管を介した排泄も見られた。
 
 
5. 99mTc-HMPAO注射液の臨床適用
 
 国内臨床試験において、脳血流異常が疑われた下記の疾患を持つ患者に対し、99mTc-HMPAO注射液による脳血流シンチグラフィーを行った。脳血流シンチグラムより局所脳血流の異常部位が明瞭に検出され、診断及び治療方針の決定に有効な情報が得られた。
 
対象疾患:脳梗塞、一過性脳虚血発作、RIND、クモ膜下出血、脳動静脈奇形、脳内出血、脳外傷、脳腫瘍、痴呆、てんかん
 
 図2に一過性脳虚血発作患者のMRI,MR Angio, PET,SPECT画像を示す。


図2 一過性脳虚血患者の症例(女性 67歳) a)MRI(T2WI)/MRA像 b)PET像 c)99mTc-HMPAO SPECT像 (原論文1より引用)

 この患者は、歩行中左側手足の一過性脱力(数分で回復)が1ヶ月に3階出現した。a)MRIでは、軽度の大脳萎縮および小さな白質病変のみを認め、MRAngioでは、右中大脳動脈水平部(→)に狭窄を認めた。b)PETでは、安静時脳血流CBF(REST)には異常を認めず、DIAMOX負荷CBF(Diamox)にて右中大脳動脈領域(→)での血流低下がある、しかし、酸素代謝CMRO2には異常なく、OEFも増加していなかった。c)99mTc-HMPAO SPECT像において、安静時RESTでは異常を認めないが、右中大脳動脈領域(→)でのDIAMOXに対する反応が低下している。
 次に、脳梗塞患者の場合の症例を図3に示す。


図3 脳梗塞(左中大脳動脈血栓性閉塞)患者の症例(男性 58歳) a)脳血管造影 術前 b)脳血管造影 術後 c)99mTc-HMPAO SPECT/MRI像(原論文1より引用)

 この患者は、突然の右手足脱力にて発症し、右片麻痺・失語症をきたした。脳血管造影像のa)術前画像では、左中大脳動脈血栓性閉塞(→)が認められ、血管内手術手技により血管形成術を施した結果、b)術後では、右肩麻痺、失語症は消失した。なお、c)99mTc-HMPAO SPECT像の術前(pre.ope.)では、左中大脳動脈領域全体に低灌流が認められるが、術後(post.ope.)では、高灌流となっている。また、c)右端の術後(day 7)MRI像では、白質の一部に梗塞巣が出現しているのみである。
 
 
6. 99mTc-HMPAO注射液の副作用
 
 臨床試験(全1561例)において、注射部位の疼痛が1例、使用成績調査(全10418例)において、嘔吐・めまい・皮疹・痒みが各1例報告されている。また、現在までの副作用自発報告において、過敏症、血圧低下、嘔吐、頭痛、発汗、冷汗、めまい、視調節障害、顔面潮紅が各1例、手足のしびれ感が2件、悪心が3件報告されている。

コメント    :
 一過性脳虚血や脳梗塞(左中大脳動脈血栓性閉塞)の例で示したように、脳血流シンチグラフィーにより非侵襲的に局所脳血流両の算出が可能である。

原論文1 Data source 1:
セレブロテックキット -放射性医薬品基準 エキサメタジムテクネチウム(99mTc)注射液調製用-
日本メジフィジックス株式会社
薬剤パンフレット、1997年10月改訂版

参考資料1 Reference 1:
放射性医薬品基準 エキサメタジムテクネチウム(99mTc)注射液調製用
(社)日本アイソトープ協会
インビボ放射性医薬品添付文書集(平成7年度), p.14-15

キーワード:画像診断, 放射性医薬品, エキサメタジムテクネチウム(99mTc)注射液, [N,N'-エチレンジ-L-システイネート(3-)]オキソテクネチウム(99mTc)ジエチルエステル注射液, 脳, 脳梗塞, 脳虚血, 局所脳血流,
diagnostic imaging, radiopharmaceutical, 99mTc-exametazime(HMPAO), [N,N'-ethylenedi-Lcysteinate(3-)]oxotechnetium(99mTc),diethyl ester(ECD), brain, cerebral infarction, cerebral ischemia, regional cerebral blood flow
分類コード:030502, 030301, 030403

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