超音波造影剤による心エコー図検査法

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作成： 2002/03/27 室生　卓データ番号　　　：030232 超音波造影剤による心エコー図検査法目的　　　　　　：超音波造影剤を用いた心エコー図検査の紹介応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　最近、末梢静脈からの投与で左心系の造影が可能な超音波造影剤が臨床で使用可能となった。超音波造影剤の臨床応用は①左室腔の造影、②ドプラ効果増強、③心筋染影に大別でき、いずれも臨床的な有用性は高いが、特に心筋染影は冠動脈造影や心筋シンチグラフィーとは異なったレベルの心筋潅流を評価できる新たな方法として大きな期待が寄せられている。詳細説明　　　　：新しい経静脈性超音波造影剤が臨床で使用可能となり、コントラスト心エコー法は新たな時代の幕開けを迎えている。　最近、臨床でも用いることができるようになった超音波造影剤は肺循環系を通過し、経静脈投与により簡単に左心系の造影が得られる。超音波造影剤を用いたコントラスト心エコーの主な臨床応用は１）心腔の造影ならびに左室心内膜面の同定２）ドプラ信号の増強３）心筋染影の３点があげられる。　　１）心腔の造影ならびに左室心内膜面の同定心エコー法による壁運動の観察や定量的な左室容量計測を行う上で、心内膜面の同定はもっとも重要なことである。超音波造影剤は前述のごとく肺循環を通過し左心系を造影することが可能であり、これにより心内膜面の同定が飛躍的に向上する。　超音波造影剤による左室造影（left ventricular opacification:LVO）の臨床応用は ① 左室容量測定 ② 負荷心エコー図における壁運動異常の検出 ③ 低容量負荷心エコー図における生存心筋の同定 ④ 心室内異常構造物（血栓、腫瘍）の存在診断などが考えられる。実際のLVOに際しては超音波を間歇的送信するintermittent imagingや送信超音波の２次高調波を画像化するharmonic imagingを用いることでより良好な染影が得られる。拡張末期、収縮末期像のみの像が必要であれば、心電図同期により間歇的に超音波を送信することで連続送信よりも良好な染影を得ることができる。図1　　　超音波造影剤による左室造影 a)fundamental imagingの連続送信によるLVO。左室腔の染影は認められるが辺縁まで造影されない、b)fundamental imagingの間歇送信によるLVO左室腔の辺縁まで造影される、 c)harmonic imagingの連続送信によるLVO。 fundamental imagingの連続送信よりは増強される、d)harmonic imagingの間歇送信によるLVO。左室腔の染影はさらに増強している。一方、連続した画像が必要な場合は、harmonic imagingをもちいることにより造影効果が得られ、壁運動の観察が容易となる。むろん、両者を併用すれば造影効果はさらに大きなものとなる。 2)ドプラ信号の増強効果　　ドプラ法を駆使することにより得られる血流情報は弁逆流や短絡血流の存在、圧格差や拡張能の指標に関するものまで多彩かつ豊富である。超音波造影剤によるドプラ信号の増強効果の主な臨床応用は以下のごとくである。 ① 弁膜症などにおける狭窄流や逆流信号の増強 ② 冠動脈血流の同定ならびに血流速の評価３尖弁逆流や大動脈弁狭窄症における連続波ドプラ法による圧較差の測定はすでに臨床に定着しており、治療方針を決定する上で不可欠である。しかしながら症例よっては明確なドプラシグナルが得られないことがある。このような場合、超音波造影剤が有効である。図2　　　超音波造影剤による大動脈弁狭窄症における狭窄血流の連続波Doppler信号の増強効果　a)超音波造影剤非投与時は連続波Doppler波形の辺縁が不明瞭である、b)超音波造影剤を投与するとDoppler波形は辺縁まで明瞭となる。超音波造影剤によるドプラ信号の増強効果の恩恵に与る最たるもののひとつに冠動脈血流の評価があげられる。超音波造影剤を使用することにより、冠動脈血流の検出はかなり容易となる。図3　　　超音波造影剤による冠動脈血流シグナルの増強効果　a)超音波造影剤投与前はほとんど冠動脈血流は検出できない、b)harmonic color Doppler 下に超音波造影剤を投与すると左前下行枝の血流が明瞭に認められる。３）心筋染影超音波造影剤を用いて心筋染影を得る方法は通常の白黒のharmonic imagingを用いるものとパワードプラ法をharmonic imagingに適応するharmonic power Doppler法によるものに大別される。白黒のharmonic imagingは造影剤により白く染影される心筋をグレースケールで観察するもので、一方のharmonic power Doppler法は心筋内の造影剤が超音波により破裂するときに発生するランダムな超音波をドプラシフトとして感知するものである。このharmonic power Doppler法の特徴は超音波造影剤に対する感度が高く、また、視認性に優れることである。図４はharmonic power Doppler法による心筋染影の実例である。超音波造影剤を末梢静脈から投与すると、まず、右室腔が染影され、ついで左室腔が、さらにその後から徐々に心筋の染影が始まる。間歇送信をやめて連続送信とすると、心腔は造影されるが心筋の部分は染影がされない。逆に送信間隔を長くすると心筋染影は増強する。図4　　　超音波造影剤による経静脈的心筋コントラストエコー図健常例：harmonic power　Doppler法をもちいて4心拍に1回の間歇送信下にレボビストを３ｍｌボーラス投与　a)超音波造影剤を投与するとまず右室の染影を認める、b)ついで、４ないし８心拍後に左室に染影を認めるが心筋には全く染影を認めない。c)左室染影後４心拍後には心筋染影が認められるようになる。この時点では染影は斑状である。d)さらに４心拍後には心筋は濃染される。今後の展望以上のように超音波造影剤を使用することにより、さまざまな臨床上有用な情報が得られる。今後、冠循環や心筋潅流に関する新たな知見が次々と得られることが期待される。コメント　　　　：最近開発された超音波造影剤の末梢静脈から投与すれば左心系の造影が可能であり、最近の断層装置の進歩と相まってこれまで超音波では見ることのできなかった領域の可視化が次々と達成されている。特に心筋染影は冠動脈造影や心筋シンチグラフィーとは異なったレベルの心筋潅流を評価できる新たな方法として大きな期待が寄せられている。それは単に心筋虚血や生存心筋の検出にとどまらず、毛細血管レベルにおける心筋循環の病態生理の解明に寄与するものと思われる。　原論文１ Data source 1：コントラスト心エコー法の新たな展開（１）－左室腔の造影、ドプラ増強効果から心筋染影までー室生　卓、吉川純一大阪市立大学医学部第一内科心エコー、1(1),pp90-95,2000 原論文２ Data source 2：心エコー図の新たな展開室生　卓、吉川純一大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学呼吸と循環、49(8),pp797－801,2001 原論文３ Data source 3：超音波造影剤の臨床応用の実際室生　卓、吉川純一大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学総合臨床、49(2),pp411－416,2000 キーワード：コントラスト心エコー図,contrast echocardiography,　心筋コントラストエコー,myocardial contrast echocardiography,　ドプラ増強効果,Doppler enhancement,　左心室染影,left ventricular opacification,　冠動脈血流速,coronary blood flow velocity,　超音波,ultrasound,　ハーモニック画像,harmonic imaging,　微小気泡,microbubble,　間歇送信,intermittent transmission,　ハーモニックパワードプラ,harmonic power Doppler 分類コード：030107,030401,030704
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