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作成: 2001/11/30 本村 信篤

データ番号   :030233
半導体素子を用いたガンマカメラ
目的      :半導体素子を用いたガンマカメラの紹介
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :放射性同位元素
フルエンス(率):    
線量(率)   :    
利用施設名   :核医学検査施設
照射条件    :特になし
応用分野    :医学、診断、工学

概要      :
シンチレーション検出器と比較すると半導体素子(CdTe、CZTなど)を用いた検出器ではエネルギー分解能と位置分解能が向上する。また軽量、コンパクトなガンマカメラが作成可能である。このように優れた特性をもつ半導体であるが、素子の値段が高価なことと製造技術的な問題で大視野の検出器を作ることが困難である。それ以外にも素子の均一性、漏れ電流、偏極現象、電極構造の問題など様々な解決すべき問題がある。

詳細説明    :
ガンマカメラとは、被検体内に投与した放射性医薬品(ガンマ線を放出する放射性同位元素(RI)で標識した化合物)の分布を、ガンマ線を検出することにより映像化する装置である(核医学検査と呼ばれる)。現在、ガンマカメラで用いられている検出器はシンチレーション検出器である(NaI(Tl)が用いられる)。この検出器はシンチレータ成分中の原子番号が大きく、密度も高いことから検出効率が高く、ガンマ線の測定に適している。また人体の横幅にあたる50cm程度の大きい有効視野を持てることも診断装置としての利点である。しかし、シンチレーション検出器は欠点として低いエネルギー分解能と位置分解能がある。低いエネルギー分解能は散乱線の混入を増大させ、画像のコントラストや定量性を劣化させる。位置分解能の低さはより画質を劣化させ、診断情報を著しく劣化させる。
これらシンチレーション検出器が持つ欠点を克服するものとして半導体素子を用いたガンマカメラが開発されている(図1)。


図1  半導体検出器の原理 半導体素子の両端に電圧を印可し、ガンマ線により生成される電子と正孔を収集する


ガンマ線測定用の半導体素子としてはGe(Li)、Si(Li)などエネルギー分解能が極めて優れたものがあるが、冷却が必要なこと、ガンマ線の阻止能が低いことなどからガンマカメラには適していない。II-VI族化合物半導体であるCdTe、CdZnTe(以下、CZT)は室温にて使用可能で、かつ高いガンマ線の阻止能を持つため、ガンマカメラへの適用が試みられている。エネルギー分解能は1個のガンマ線を測定する際に生じる情報キャリアーの数で決まる。半導体検出器の情報キャリアー(1次電子が作る電子正孔対)の数はシンチレータのそれ(シンチレーション光子)より優っている。シンチレータでは約10% (140 keV)であったエネルギー分解能は半導体では約5%に改善する。位置分解能に関しては、シンチレータではアンガー方式の位置計算を行うために半値幅FWHMで約3mm程度である。一方、半導体では画素を構成する半導体素子のサイズがそのまま空間分解能になり、1mm程度の位置分解能を実現できる。更にシンチレータに比べて小型、軽量化が実現し、従来のガンマカメラがもつ巨大な重量物が動作する工作機械的なイメージは一新されると考えられる(図2)。


図2  シンチレーション検出器と半導体検出器の比較(原論文1から改変)


このように優れた特性をもつ半導体であるが、素子の値段が高価なことと製造技術的な問題で大視野の検出器を作ることが困難である。それ以外にも素子の均一性、漏れ電流、偏極現象、電極構造の問題など様々な解決すべき問題がある。これらの問題点については多くの研究者が改善に向けて努力している。
製品としてはDigirad 社(米国)がCZTを使用した中視野(20x20cm)ガンマカメラを最初に開発した。しかし、現在は販売されていない。現在、販売されている装置はeVproduct(米国)と安西メディカルのCZT小視野(5x5xcm)カメラである。ハンディタイプで術中にも使用でき、ガンマカメラの新しい使用方法が検討されている。CdTeを使用した装置は販売されていないが、研究用として東芝やアクロラドが成果を発表している。電極構造はCZTの装置はガンマ線入射方向に対して垂直な面になるのに対し、CdTeでは平行になる構造を採用している。この方式だと電極間の距離が短く、強い電界ができる。更にガンマ線の入射方向に対する深さも増やせるので検出効率を高めることができる。脳ファントムでシンチレータと半導体を比較した結果を図3に示す。


図3  シンチレーション検出器と半導体検出器の比較(原論文2から改変) 脳ファントムのプラナー画像による比較


半導体ではコントラストが改善され、良好な画像が得られることが分かる。

コメント    :
シンチレータの代わりに半導体を用いることによりガンマ線検出器としての性能は極めて向上する。問題は向上した性能を生かすガンマカメラシステムの姿である。位置分解能に関しては、現状のシステムではコリメータによる因子が決定的でシステムとしての位置分解能に検出器単体の位置分解能はほとんど寄与しない。またエネルギー分解能に関しても画質改善に寄与する効果は未知数の点が多い。今後、研究成果が積まれる中で、半導体の特性を生かした新しいガンマカメラが誕生していくと考えられる。

原論文1 Data source 1:
核医学における半導体検出器の技術動向
中村 信之
東芝医用システム社
Medical Imaging Technology Vol.18, No.1, January 2000, p.3-8

原論文2 Data source 2:
CdTe半導体検出器におけるガンマカメラへの適用 -エネルギー分解能およびプラナー画像の評価-
高山 卓三、中村 信之、本村 信篤、森 一生、他
東芝医用システム社
核医学 Vol.37, 2000, p.181-187

キーワード:半導体,semiconductor、 ガンマカメラ,gammacamera、 核医学,nuclear medicine、シンチレータ,scintilator、 検出器,detector、エネルギー分解能,energy resolution、 位置分解能, spatial resolution、 画素,pixel
分類コード:030301, 030403, 030701

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