膵がんへの術中照射

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作成： 2003/12/16 唐澤　克之データ番号　　　：030255 膵がんへの術中照射目的　　　　　　：術中照射中心に膵がんの治療方針と問題点についての解説放射線の種別　　：エックス線,電子放射線源　　　　：X線、電子線応用分野　　　　：医学,治療概要　　　　　　：　厚生労働省の統計によると膵がんの死亡者数は、2002年で2万人を越え、1985年に比較して約2倍に増加している。問題は罹患率の割に死亡率が高く、近年生存期間については若干改善したが、治癒率は殆ど改善されていない。膵がんは予後不良であり、臨床症状が出にくく、局所及び肝転移等への進展が早期に起こりやすく、放射線や抗がん剤の感受性が良くないなど多くの理由が挙げられる。切除例でも長径が１㎝を越えると予後が悪くなるとされている。膵がんが最近増加傾向にあるので、画期的な治療法が期待される。詳細説明　　　　：１．膵がんの治療　膵がんの治療は元来切除が第一選択であった。しかし治癒切断を行っても、局所及び遠隔再発が多く、補助療法の必要性が説かれて来た。最近の欧州の臨床試験から、補助療法としては化学療法の有用性が明らかにされた。一方非切除膵がんについては放射線治療＋化学療法による治療が標準とされているが、まだこの治療法については試験的な段階である。　術中照射については放射線感受性の高くない膵がんは外部照射のみで局所制御を得ることは例外的であることから、局所制御を高めるためには正常組織への線量を増やさずに、外部照射に追加する形で用いれば、有望であると考えられている。２．膵がん術中照射の実際　駒込病院での膵がんの治療方針を示す。（図1）。まず術前検索で遠隔転移の有無をチエックし、遠隔転移がなく、手術に耐えられる場合、開腹手術を行う。開腹時切除の可否を判定し、切除可能で有れば切除を行い、直後に術中照射を行い、不能であれば、術後に起こる通過障害の予防のため、消化管のバイパスを行い、その後術中照射を行う。術後に外部照射を行う。　切除の場合は切除後、消化管のバイパスの場合は腫瘍を露出して、手術室から照射室まで搬送し、治療装置のところで、照射範囲を決定して、照射筒を治療装置に固定して、治療を開始する（図2）。照射は膵がん切除後の場合は腫瘍の存在した部位と腹腔動脈、及び上腸間膜動脈の根部を含む範囲に、非切除の場合には膵がんそのものに対して施行される。照射中は室外からテレビモニタで患者とバイタルを観察する。20Gyの照射時間は概ね5分程度である。駒込病院では照射は手術室の外を出て、100メ－トル程離れた、照射室へ搬送する形で行われるが、手術室を出てから、帰室するまでの所要時間は約30分である。図1　都立駒込病院における膵がんの治療方針図2　術中照射方法３．膵がん術中照射の治療成績　駒込病院では開院以来約250例の膵がん症例に術中照射を行っている。1983～1998年までの108例に対する成績では、全例の平均生存期間が11.3カ月、1年生存率、2年生存率が46.7%,17.4%であった。切除例では平均生存期間,1年生存率、2年生存率が12.4カ月、53.3%,24.1%,非切除例では各々10.3カ月、39.7%,8.2%であった。切除例のうち治癒切除例は各々17.4カ月、71.4%,38.7%で、非治癒切除例は各々10.2カ月、44.2%,16.6%であった。非治癒切除例と非切除例の予後に差が認められなかった（図3）。30日以内の死亡は１例もなかった。死因は肝転移による肝不全が最も多かった。図3　非治癒切除と非切除法による生存率コメント　　　　：現在術中照射にGemcitabine等の新規抗がん剤の併用や、低酸素細胞増感剤の併用等が試みられ、さらなる治療成績の向上が目指されている。問題点としては術中照射が外科、放射線科、麻酔科の協力下で行われる必要があり、現在大きな大学病院でさえも、設備、体制ともに整わずに行われている現実があるという点である。また臨床的には肝転移の克服が必須と考えられている。また膵がんは易進行性かつ治療抵抗性なため、なかなか治療の成功例が見られない。今後よりよい集学的治療法を見出し、治療成績が改善することが待たれる。キーワード：膵がん, 放射線治療, 放射線感受性, 術中照射, 外部照射, Pancreatic Cancer, Radiation Therapy, Radiosensitivity, Intraoperative Radiation Therapy, External Irradiation 分類コード：030201
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