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作成: 1997/10/04 佐藤 乙丸

データ番号   :040098
プルトニウム238熱源の製造と宇宙探査用電源としての応用
目的      :238Pu熱源の製造と宇宙探査用熱動力変換発電システムの開発
放射線の種別  :アルファ線
放射線源    :238Pu(熱出力11.8kW)
利用施設名   :ロスアラモス国立研究所、サバンナリバ-プラント、カ-ルスル-エ中央核研究所、ロックウエル、インタ-ナショナル社、国立航空宇宙局、エネルギ-省
応用分野    :宇宙探査用各種装置の電源

概要      :
 長寿命の発電器として主に宇宙用に開発されてきた238Pu熱源の製法と高温高速の衝撃試験や各種の検査に関する、西ドイツのカ-ルスル-エ研究所と米国のサバンナリバ-プラントの結果が報告される。さらに、この熱源モジュール16ケから成る熱源ユニット3組と、閉じたブレイトンサイクルを熱機関とする、2.5kWeの電源システム(土星探査用カッシーニの動力源である)の特長と、この電源を組み込んだ装置の操作に伴う被曝線量の推定を行っている。

詳細説明    :
 西ドイツでは1967年から、発電炉の使用済燃料から各種のアクチノイド核種を回収する研究が行われてきたが、1973年に中止になった。この間行われた237Np,241Am,243Am,244Cmの回収、1日1kgの使用済燃料を処理できる再処理実験施設での成果、237NpO2-Feサーメットをペレット状にして中性子照射後238Puを回収する実験(溶媒抽出にTBPを用いたこと、および、Feの使用は好ましくないと結論づけている)、241Amを中性子照射して236Puの含有量の少ない238Puの製造実験などについて述べている。
 サバンナリバープラントでは、NpO2-AlサーメットにAlをかぶせて照射し、硝酸液中に溶解後イオン交換技術で、年間約50kgの238Puを製造している。こうして得られた238Pu112gを含む酸化Puをペレット状に成形したもの4ケをイリジウム合金容器に封入したものが、汎用熱源(GPHS)モジュールで、すでにガリレオのアイソトープ熱電発電器(RTG)の熱源などとして使用されてきたものである。
 一方、閉ブレイトンサイクル(CBC)熱動力変換技術は、米国のエネルギー省や航空宇宙局で行われた研究と同種のハードウエアを航空機に適用した経験に基づいている。これらを組み合わせた、熱動力変換アイソトープ電源システム(DIPS)は、RTGよりも熱ー電気変換効率が数倍高いため、重量あたりの電気出力も約4倍で、kWeオーダーの電源として極めて優れており、宇宙空間や月面上の各種有人無人装置の電源として期待されている。
 熱源は16ケのGPHSをならべ、そのまわりに動作流体(ヘリュームとキセノンの混合物)用パイプと可逆熱除去システム用パイプを配管し、事故時にアイソトープの発熱によって溶解してしまうような断熱材でくるんだ缶状熱源ユニット(HSUs)3ケを並列に配置したもので、総熱出力11.8kWである。
 この熱源で加熱された動作ガスは、まずタービーン-交流発電機-コンプレッサー(TAC)のタービンに入り、ガス圧力が半分に低下する。ついで復熱装置を通り、ここで熱源へ戻るガスにエネルギーを付与する。この装置によって約40%の燃料の節約が達せられる。ガスはここからラジーエターに入り熱放出が行われる。こうして約300Kに冷えたガスは、TACに戻り交流発電機を冷やしてコンプレッサーに入り、2対1に加圧される。ガスは復熱装置に入りタービンからのガスで予熱されて熱源へ戻る。可逆熱除去システムは、ガス流が止まったような場合、通常の動作温度以上の発熱を安全に放出させる装置である。図1に2.5kWeのDIPSの概念例を示した。


図1 DIPS 2.5kWe Power Module Design Concept. (原論文2より引用。 Reproduced from CONF-910116, American Institute of Physics Conf. Proc. No.217, Pt.2, p.544-550 (1991), R.A.Johnson, A.G.Stadnik, R.Cataldo and R.Williams: Versatile Dynamic Power Systems for the Exploration of Space, Copyright (1991), with permission from American Institute of Physics and the authors.)


表1 2.5kWe DIPS Power Module Performance Characteristics. (原論文2より引用。 Reproduced from CONF-910116, American Institute of Physics Conf. Proc., No.217, Pt.2, 544-550 (1991), R.A.Johnson, A.G.Stadnik, R.Cataldo, R.Williams: Versatile Dynamic Power Systems for the Exploration of Space, Copyright (1991), with permission from American Institute of Physics and the authors.)
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 Net power(kWe)                          2.5
 Thermal power(kWt)                      11.8
 Number of fuel canisters                3
 Number of GPHS modules per canister     16
 System mass(kg)                         357
 Radiation area(m2)                      5.6
 Turbine inlet temperature(K)            1300
 Compressor inlet temperature(k)         374
 Mass flow rate (kg/s)                   0.17
 Net efficiency(EOM%)                    23.0
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 このDIPSの重量は表1のように約360kgなので、月面上で2〜3人で取りはずしたり、別の装置に付け替えたりすることができる。またHSUsの寿命が数10年(238Puの半減期88年)もあるのでHSUsのみ取りはずして再使用ができる。
 最後に、宇宙飛行士に避けられない1〜10kWeのDIPSを使った時の被ばく線量に関し月面上での概算値を求めている。例えば、2.5kWeのDIPSから1m離れて4.8時間作業した場合約5mSvとなり、これは地上における一般人の年間線量限度に相当する。長時間にわたらなければ、一つの作業ごとの被ばく線量は問題なさそうである。しかし、数種類の作業を6ケ月間継続して行うと、放射線業務従事者の年間線量限度を越える恐れがある。 

コメント    :
 太陽熱が月面の約1%に減少する土星の探査カッシーニ用電源として最適であるが、月探査には太陽のエネルギーを利用すべきであろう。
 1964年航海用衛星の打ち上げ時の失敗で高度120kmで焼失、238Pu(630TBq)が全世界にばらまかれた。1970年の全世界の土壌分析の結果、大気中の核爆発実験によって放出された239Puと238Puの総量はそれぞれ6500と300TBqであるから、630TBqはかなりの数量である。このため、その後の238Pu熱源は地上で回収する方式に改められ、1968年のニンバスの電源の238Pu1300TBqは、カリホルニア海岸の100mの海底から回収され再利用された。以上の例から、仮に打ち上げに失敗しても大気中にばらまかれることなく回収されると考えられる。

原論文1 Data source 1:
Monthly Progress Report Heat Source Technology Programs December 1993
T.G.George
Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, NM 87545, USA
LA 12787-PR (1994)

原論文2 Data source 2:
Versatile Dynamic Power Systems for the Exploration of Space
R.A.Johnson, A.G.Stadnik, R.Cataldo and R.Williams
Rockwell International Rocketdyne Division, 6633 Canoga Ave, Canoga Park, CA 91303, USA, National Aeronautics and Space Administration-Lewis Research Center, Cleveland, OH 44135, USA, U.S. Department of Energy, Germantown, MD 20874, USA 
CONF-910116, American Institute of Physics Conf. Proc., No.217, Pt.2, p.544-550 (1991)

原論文3 Data source 3:
Plutonium-238 Production at the Savannah River Plant
P.L.Roggenkamp
Savannah River Plant
Transactions of American Nuclear Society, 55, p.239 (1987)

原論文4 Data source 4:
Recovery of By-product Actinides from Power Reactor Fuels and Production of Heat Soucre Isotopes
G.KOCH
Kernforschungszentrum Karlsruhe, Postfach 3640, D 7500 Karlsruhe 1, Federal Republic of Germany
American Chemical Society Symp. Ser., No.117, p.411-425 (1980)

参考資料1 Reference 1:
Pultonium-238 Processing at Savannah River Plant
G.A.Burney
Savannah River Plant
Transactions of American Nuclear Society, 45, p.247(1983)

キーワード:熱動力変換発電システム、宇宙の探査、Pu-238熱源の製法と検査、カッシ−ニ
dynamic isotope power system, exploration of space, fabrication and inspection of Pu-238 heat source, casini
分類コード:040201,040306

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