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作成: 2002/03/12 坂本 幸夫
データ番号 :040255
放射線取り扱い施設等の簡易しゃへい計算法
目的 :放射性同位元素や放射線発生装置を取り扱う施設でのしゃへい計算
放射線の種別 :エックス線,ガンマ線,中性子
放射線源 :単色ガンマ線(15keV−10MeV)、RIガンマ線(18F, 24Na, 51Cr, 54Mn, 59Fe, 56Co, 57Co, 60Co, 64Cu, 65Zn, 67Ga, 68Ge/68Ga, 75Se, 81Rb/81mKr, 85Kr, 85Sr, 99Mo/99mTc, 99mTc, 103Pd/103mRh, 110mAg, 111In, 124Sb, 123I, 125I, 131I, 133Xe, 137Cs, 192Ir, 198Au, 197Hg, 201Tl, 226Ra, 241Am)、ベータ線源からの制動放射線(3H, 14C, 32P, 33P, 35S, 45Ca, 63Ni, 85Kr, 89Sr, 90Sr, 90Y, 90Sr/90Y, 147Pm )、中性子源(252Cf、241Am-Be、d-T、d-D)、高エネルギー電子線からの制動放射線(4-25MeV)
照射条件 :点等方線源
概要 :
国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告の放射線障害防止法等への取り入れに伴い、放射線業務従事者に対する年間の線量限度及び管理区域境界の線量限度の低減化とともに、計算による被ばく評価の基準が1センチメートル線量当量から実効線量に変更になった。このため、各施設での実効線量による被ばく評価の見直しが必要になった。このため、手計算によるしゃへい体表面及び管理区域境界での実効線量を評価する方法が提案されており、これに必要な線量率定数及びしゃへい体による線量透過率が求められている。
詳細説明 :
放射性同位元素あるいは放射線発生装置を取り扱う施設では、そこで働く放射線業務従事者のみならず、事業所内で働く人々及び事業所外の一般公衆の安全を確保するため、それぞれの場所での線量を法令で定められた線量限度以下としなければならない。放射線による被ばくを低減する方法の1つとしてしゃへい体を設置する方法があり、線量限度以下の線量になるようにしゃへい体の厚さを決めることは非常に重要なことである。
国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告の放射線障害防止法等への取り入れに伴い、放射線業務従事者の被ばくの線量限度が年間50mSvから5年間100mSv(いかなる年度も50mSv以下)に、管理区域とすべき線量基準が週0.3mSvから3月1.3mSvにそれぞれ引き下げられた。また、しゃへい計算による被ばく評価で評価すべき線量が1センチメートル線量当量から実効線量に変更になった。このため、従来の施設においても実効線量の観点で被ばく線量の再評価が必要になっている。
被ばく評価において、放射線の強度と線量の関係を表すのが線量換算係数である。従来は、人体の軟組織とほぼ等価な物質からなる直径30cmの球に放射線が平行に入射した場合の表面から1cm深さ位置での線量当量への線量換算係数を用いていた。改訂された放射線障害防止法等で規定される実効線量は、人体が放射線に照射されるとき体内の臓器・器官の吸収線量に、入射放射線の種類に応じた放射線荷重係数を乗じた各臓器・器官の等価線量を算出した後、等価線量にこれらの各臓器・器官の放射線に対する感受性を考慮する組織荷重係数で重み付けして身体全体で平均化したものである。実効線量への線量換算係数は、人体の放射線の照射条件により異なるが、10MeV以下の光子及び20MeV以下の中性子については、人体の前方方向からの照射に対して最も線量が大きくなることから、放射線障害防止法等の告示別表では前方入射条件における線量換算係数が示されている。
図1にガンマ線・X線の光子についての線量換算係数を示す。実効線量への線量換算係数は、従来用いてきた1センチメートル線量当量への線量換算係数に比べて、0.1〜10MeVのエネルギー範囲で10〜20%小さい。一方、中性子の場合は、実効線量への線量換算係数は、1センチメートル線量当量に比べて1〜10MeVの範囲で約1.2倍、10-6〜10-2MeVの範囲で約2倍となる。従来の中性子による1センチメートル線量当量の評価では、1985年のICRPパリ声明により得られた中性子線量当量を2倍にするようにとの行政指導があるが、実効線量が2倍した1センチメートル線量当量を上回るのは10-4〜10-2MeVの範囲だけである。
図1 光子に関する各種の線量換算係数データ。1センチメートル線量当量H*(10)はICRP51と74とであまり差がないので、二つの曲線は重なって見える。(原論文1より引用)
しゃへい計算定数を用いた手計算による実効線量率の評価は以下のように行う。この方法では、しゃへい体を透過した放射線のスペクトルを評価する必要はない。なぜなら、しゃへい計算定数が対象とする線源の単位強度当たりの実効線量率としゃへい体による実効線量の透過率からなっており、これらを組み合わせることにより任意の厚さのしゃへい体での実効線量率を評価出来る。
対象とする放射線は、単色光子、RIからのガンマ線・X線、ベータ線源からの制動放射線、中性子源及び電子加速器からの制動放射線である。これらを線源とした医療分野、工業利用及び基礎研究分野における密封RI取扱事業所、非密封RI取扱事業所及び放射線発生装置取扱施設におけるしゃへい計算例がある。
単色光子に対しては、鉄、鉛、普通コンクリート及び水の4種類のしゃへい体における実効線量の透過率等の定数が求められている。実効線量の透過率は、しゃへい体がない場合の実効線量に対するしゃへい体がある場合の実効線量の比で定義される。光子のエネルギーは15keV〜10MeVの24点であり、しゃへい体の厚さは0.5〜40mfp(平均自由行程)の16点である。なお、平均自由行程は、しゃへい体内で光子が衝突までに進む平均距離に相当する。
RI線源に対しては、18F〜241Amの33種類からのガンマ線・X線に対して、実効線量に関する定数を求めている。実効線量の線量率定数は、1MBqの点状RI線源からのガンマ線・X線による、しゃへい体がない裸の状態の線源から1m離れた位置における実効線量率を表しており、実効線量の透過率は、鉄、鉛、普通コンクリート及び水の4種類のしゃへい体におけるcm単位の厚さで与えられている。手計算によるしゃへい計算は、以下のように行う。最初に、実効線量の線量率定数(GE)からしゃへい体がない場合の裸の線源からx(m)離れた位置での実効線量率E0を求める。
E0 = S × GE/x2
ここで、Sは線源強度(MBq単位)である。次に、しゃへい体の厚さd(cm)での実効線量の透過率Faを乗ずることにより実効線量率Eが求められる。
E = Fa × E0
RI線源の種類毎にしゃへい体中での実効線量の線量透過率に関する図及び数表が求められている。図2は60Co線源の例であるが、この図を利用することにより4種類のしゃへい体において同程度のしゃへい能力をもたらす厚さを簡単に知ることができる。
図2 60Coからのガンマ線の実効線量透過率(原論文1より引用)
4種類の中性子線源に対しても、実効線量率定数と220cm厚さまでの実効線量の透過率が示されている。取り扱っているしゃへい体は、水、コンクリート、鉄、鉛、ポリエチレン及び重コンクリートの6種類である。図3に普通コンクリート中の252Cf中性子源からの中性子、二次ガンマ線のそれぞれの実効線量及びそれらを合算した実効線量の透過率を示す。中性子はしゃへい体で散乱・吸収されると二次ガンマ線が発生するので、二次ガンマ線に対する評価を無視することが出来ない。
図3 普通コンクリート中の252Cf中性子源からの中性子及び二次ガンマ線の実効線量透過率(原論文1より引用)
コメント :
しゃへい計算で評価すべき線量が1センチメートル線量当量から実効線量に変わることにより、γ線の線量は10%〜20%小さくなる一方、中性子の線量は241Am-Be及びd-D線源の場合約10%大きくなるが、他の線源ではほとんど変わらないか僅かに小さくなる。しかしながら、従来の1センチメートル線量当量を2倍していた中性子線量の評価に比べると、中性子の実効線量は小さい結果となる。
原論文では標準的な普通コンクリートの密度を2.10gcm-3としたしゃへい計算定数を求めており、これらは従来の密度2.30gcm-3とした定数に比べて小さくなっている。普通コンクリートの密度が明らかでない場合は、この値を使うことを勧められているが、密度が2.10gcm-3を超える場合には定数を補正して使うことになる。
原論文1 Data source 1:
タイトル 放射線施設のしゃへい計算実務マニュアル
著者 放射線施設のしゃへい計算実務マニュアル編集委員会
所属機関 (財)原子力安全技術センター・
刊行物名 放射線施設のしゃへい計算実務マニュアル 2000 財団法人 原子力安全技術センター 2000年12月
キーワード:ガンマ線、制動放射線、中性子線、実効線量、線量率定数、線量透過率、線量限度、しゃへい
gamma-ray, Bremsstrahlung, neutron, effective dose, dose rate constants, transmission factors of dose, dose limit, shield
分類コード:040204,040205,040105
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