ポジトロンCTによる肝腫瘍の血流動態解析診断

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作成： 1999/02/22 谷口　弘毅データ番号　　　：030026 ポジトロンCTによる肝腫瘍の血流動態解析診断目的　　　　　　：肝腫瘍の局所血流量測定・解析による診断法の紹介放射線の種別　　：陽電子放射線源　　　　：陽電子放出核応用分野　　　　：医学、診断、機能定量概要　　　　　　：　ポジトロンCTでは各臓器の局所血流量を測定することができるが、肝腫瘍にも応用できる。肝細胞癌では局所血流量は非癌部の局所血流量より多く、転移性肝癌では局所血流量は非癌部の局所血流量より少ない。また、ポジトロンCTでは反復検査が可能なので、アンギオテンシン-Ⅱによる昇圧化学療法を行う際、薬剤到達性のシミュレーションが可能である。経カテーテル動脈塞栓療法の効果判定も可能である。詳細説明　　　　：　肝腫瘍は、日本では男性において肺癌、胃癌についで３番目に高い死亡率を示している。肝腫瘍の特徴は、肝動脈のみから血流を受けるので、肝腫瘍におけるトレーサーの動態は単一のコンパートメントモデルで表すことが可能である。したがって、肝腫瘍の局所血流量は容易に求めることができる。C¹⁵O₂吸入定常法では肝腫瘍の局所血流イメージを容易に得ることができる。ここでは、肝腫瘍における血流動態を解析して診断した結果を示す。肝細胞癌のC¹⁵O₂吸入定常法によるPET画像とX線CT画像を図1に示す。図1　肝細胞癌のC¹⁵O₂吸入定常法によるポジトロンCT画像とX線CT画像　a)PET画像　b)X線CT画像（原論文1より引用）　肝癌といえば、肝細胞癌を指すことが多く古典的な癌と見ることが出来る。図１a、b)の→で示した肝細胞癌の場合には、局所血流量は非癌部より多く(ａの→部)なっていることがわかる。　転移性肝腫瘍(小腸平滑筋肉腫の肝転移)の場合について、C¹⁵O₂吸入定常法によるPET画像とX線CT画像を図2に示す。図2　転移性肝腫瘍のC¹⁵O₂吸入定常法によるポジトロンCT画像とX線CT画像 a)PET画像　b)X線CT画像（原論文1より引用）　消化器癌による転移性肝癌では、X線CTでは普通の腫瘍形態(b→)であるが、ポジトロンCTではドーナツ型に見え、内部の血流が低下(a→)している。このほか、肝血管腫ではほとんど血流イメージは得られない。　肝腫瘍の精密な局所血流量測定には、H₂¹⁵O静注動態法が必要である。H₂¹⁵O静注動態法では、肝腫瘍のtime activity curveのpeakは脾臓のtime activity curve のpeakと時間的に一致し、肝腫瘍が肝動脈のみから栄養されていることが確認できる。これに対して、非癌部肝のtime activity curveのpeakは脾臓のtime activity curve のpeakが過ぎてからである。これは、非癌部肝では門脈からの血流の供給が多いためと考えられる。これまで測定した、H₂¹⁵O静注動態法による肝細胞癌26症例27腫瘍の局所血流量は、57.8±8.9 (平均±95%信頼区間：以下同じ)ml/min/100g、大腸癌肝転移14症例21腫瘍のそれは、37.8±6.1 ml/min/100gであった。肝細胞癌26症例27腫瘍における水の血液組織分配係数量は0.78±0.05、大腸癌肝転移14症例21腫瘍のそれは0.59±0.05であった。　これまでの肝腫瘍および非癌部の局所肝血流量の測定により、転移性肝癌を内包する非障害肝では非癌部の局所血流量が増加し、かつ、動脈／門脈血流量比が著明に増加していることが判明した。これに対して、肝細胞癌を内包する硬変肝の非癌部の局所血流量の増加はなかった。また、ポジトロンの半減期は極めて短く、¹⁵Oの半減期は123秒であるから反復検査・負荷検査が可能である。この特徴を生かした血圧昇圧時の血流動態の測定を行った。図３に、アンギオテンシン-Ⅱによる昇圧時の件腫瘍血流、肝血流の変化を肝細胞癌患者のX線CT画像とともに示す。図3　肝細胞癌のC¹⁵O₂吸入定常法によるポジトロンCT画像とX線CT画像 a)平常時、昇圧前の血流イメージ画像　b)アンギオテンシン-Ⅱによる昇圧時の血流イメージ画像　c)X線CT画像（原論文1より引用）　a)はC¹⁵O₂吸入定常法による平常時の血流イメージ画像であり、b)はアンギオテンシン-Ⅱにより平均血圧を平常時の1.5倍とした、昇圧下でC¹⁵O₂吸入定常法によるPETスキャンした時の血流イメージ画像である。c)は肝細胞癌の所在(→)を示す。肝細胞癌の局所血流量はほとんど変化がない(昇圧時の血流量は平静時の1.03倍)が、非癌部では血流量が低下し0.90倍になっている。ちなみに脾臓の局所血流量は0.83倍になった。これは、アンギオテンシン-Ⅱによる昇圧で非癌部の血管が収縮して血流量が低下し、肝細胞癌の部分が強調されて描出(b→)されているためである。通常、癌による新生血管には筋層がなく、アンギオテンシン-Ⅱによる昇圧下でも血管が収縮せず、腫瘍の血流量が維持される。　ポジトロンCTでは定量性が高いため、昇圧前後の血流量の比から昇圧化学療法を行う際の治療係数を算出することができる。例えば上記の昇圧下での肝腫瘍に対する治療係数は、非癌部肝に対し1.14倍、肝外臓器に対して1.24倍になっていることになる。このほか、ポジトロンCTによる肝腫瘍の血流診断では、経カテーテル動脈塞栓療法の効果を判定することができる。コメント　　　　：　ポジトロンCTで肝腫瘍の血流動態を測定することにより、化学療法・塞栓療法の効果予測を行うことが可能である。原論文１ Data source 1：ポジトロンCTによる肝腫瘍の局所血流量・血液量測定谷口　弘毅、山口　明浩、国島　憲、高　利守、北川　一智、大林　孝吉、北村　和也、萩原　明於、山口　俊晴京都府立医科大学第一外科肝胆膵 37(4)、pp.531-538、1998 参考資料１ Reference 1： Non-invasive quantification of human liver neoplasms by positron emission tomography (PET) using C¹⁵O₂ steady state method H.Taniguchi, A.Oguro,K.Takeuchi,K.Miyata,H.Koyama,H.Tanaka, T.Takahashi First Department of Surgery, Kyoto Prefectural University of Medicine Toshio Takahashi ed. Recent Advances in Management of Digestive Cancer. Springer-Verlag (Tokyo); 1993: pp.631-633 参考資料２ Reference 2： Angiotensin-Ⅱ-induced hypertension chemotherapy: Evaluation of hepatic blood flow with Oxygen-15 PET H.Taniguchi,H.Koyama,M.Masuyama,T.Takada,T.Mugitani,H.Tanaka,M.Hoshima,T.Takahashi First Department of Surgery, Kyoto Prefectural University of Medicine J. Nuclear Medicine 37: 1522-1533, 1996 キーワード：ポジトロンCT,PET,Positron Emission Tomography,酸素-15,O-15,oxygen-15,O-15-二酸化炭素,oxygen-15-carbon dioxide,肝局所血流量,blood flow,肝局所血液量,blood volume肝腫瘍,liver tumor,肝細胞癌,hepatoma,局所血流量,blood flow,アンギオテンシンⅡ,angiotensin-Ⅱ 分類コード：030301,030401,030501
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