腫瘍マーカー測定用の放射性体外診断用医薬品

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作成： 2001/02/01 藤居賢データ番号　　　：030204 腫瘍マーカー測定用の放射性体外診断用医薬品目的　　　　　　：腫瘍マーカー測定試薬の測定方法と臨床的有用性の紹介放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：¹²⁵I 応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　腫瘍マーカーの歴史は、1963年のAbelevらが報告したα-フェトプロテイン(AFP)に始まり、翌年Goldらが腫瘍胎児性抗原(CEA)を報告して胎児性蛋白質が腫瘍マーカーとして役立つことが注目され、その後種々の腫瘍マーカーが登場した。現在では、モノクローナル抗体の技術の進歩に伴い悪性腫瘍患者の診断において欠かせない検査のひとつとなった。現在利用されている測定方法及び各腫瘍マーカーの臨床的意義を紹介する。詳細説明　　　　： 1. 腫瘍マーカーとは　腫瘍マーカーは、「腫瘍細胞が産生する物質又は腫瘍の存在に応じて非腫瘍細胞が産生する物質であり、その測定が腫瘍の存在を示唆し、臨床診断補助や転移・再発の早期発見に有用なもの」と定義され、30年にわたりX線CT・超音波・MRIなどで得られる形態情報とは異なる悪性腫瘍の生物学的情報として活用されている。　現在知られている腫瘍マーカーには、糖蛋白質、酵素アイソザイム、ペプチドホルモン、ムチン、糖鎖、アミン、ステロイドなど様々なものがある。これらのほとんどは、癌細胞だけが特別に作る癌特異的物質ではなく、癌細胞が大量に作るものの特定の正常細胞でも作ることのできる癌関連物質である。ゆえに、腫瘍マーカーだけで癌と非癌を完全に識別できるものではない。しかし、通常にはない部位で強く発現して免疫染色で検出されれば、異常な過剰産生の原因として当該マーカー産生腫瘍の存在を推定することができる。表1　腫瘍マーカーとその腫瘍特異性 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 腫瘍 → 食道胃大腸肝胆膵肺乳房卵巣子宮前立腺膀胱 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- AFP ◎ CEA ○ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎ CA19-9 ○ ○ ○ ◎ ◎ KMO-1 ○ ○ ○ DUPAN-2 ○ ○ ○ CA50 ○ ○ ○ CA72-4 ○ ◎ ◎ SLX ◎ ◎ ○ CA15-3 ○ ◎ ○ CA125 ○ ○ ○ ◎ ○ SCC ○ ◎ ○ NSE ◎ Cyfra ○ ○ ◎ ○ ○ TPA ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ PA(PSA) ◎ ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 各腫瘍マーカー発現の特異性：◎／高い、○／中程度 2. 腫瘍マーカーの測定原理及び操作方法　腫瘍マーカー検査の多くは、血液(血清・血漿)をサンプルとして用いることがほとんどであり、1回の測定に必要とされる検体量は数10μL～100μL程度で十分である。放射性体外診断医薬品のキットは、放射性物質にI-125を用いており感度のすぐれたキットである。　放射性体外診断医薬品の腫瘍マーカー検査薬中で、検査数が多い5項目の代表的試薬の特徴を表2に記載する。表2　各測定項目の代表的な試薬の測定原理と特徴 --------------------------------------------------------------------------------------------------- 項目商品名測定原理検体種類量測定時間測定範囲 --------------------------------------------------------------------------------------------------- CEA CEA・リアビーズ IRMA 血清,血漿 50μL 4時間 0.08～500ng/mL AFP α-フェト・リアビーズ IRMA 血清,血漿 20μL 20時間 0.5～700ng/mL CA15-3 セントコアCA15-3RIAキット IRMA 血清,血漿 30μL 2時間 2～200U/mL CA125 セントコアCA125ⅡIRMAキッ IRMA 血清,血漿 100μL 20時間 2～500U/mL CA19-9 セントコアCA19-9キット IRMA 血清,血漿 100μL 4時間 1～240U/mL --------------------------------------------------------------------------------------------------- IRMA : immunoradiometric assay 　腫瘍マーカー検査のほとんどは、抗原抗体反応を測定原理としており、特異的に結合する抗体を用いて測定対象を検出するキットである。代表例としてCEA・リアビーズ（ ¹²⁵I標識抗AFP抗体）の測定方法を記載する。　CEAリアビーズキットの操作手順 1) 検体、標準液に緩衝液、ビーズを加え反応(10～37℃, 4時間振とう) 2) CEA・リアビーズと反応(4～30℃,16～24時間) 3) ビーズ洗浄 4) γカウンターにより放射能量を測定する　最近では、放射性同位元素(I-125)を非放射性物質に置き換えたEIA(enzyme immunoassay)やCLIA(chemiluminescense immunoassay)などの全自動測定キットが数多く開発されている。これらのキットは、測定時間の短縮・検体量の少量化・測定感度にすぐれており、IRMAキットに代わって使用されるケースが年々増加している。 3. 腫瘍マーカーの臨床応用　腫瘍マーカーは、近年急速に発達した画像診断法と比較すると、癌診断法としては劣ると言える。このため実際の臨床現場では、癌の診断よりスクリーニングあるいは補助診断法として用いられている。一方、腫瘍マーカーは癌治療後のモニタリングツールとして利用価値が高く、病状経過のフォローアップに多く利用されている。腫瘍マーカー検査の癌診断に対する価値を高めるためには、今後癌に対する特異性と感度の改善が必要と言えよう。　腫瘍マーカーは、現在臨床的に大きく分けて三つの用途で活用されている。 1) ハイリスク患者の追跡・癌の早期発見 2) 癌の診断補助 3) 治療後のフォローアップコメント　　　　：　腫瘍マーカー検査は、悪性腫瘍から血中に流出した腫瘍関連抗原を高感度に検出するもので、悪性腫瘍患者の診断に欠かせない検査である。腫瘍マーカーは決して万能ではないが、その特性を熟知し、その時の患者情報・検査目的に応じたマーカー選択・データ解析を行うことで有用な情報を与えうるものである。現在多くの腫瘍マーカーが臨床応用されているが、その臨床有用性をより高めるにはキット間のデータ差の解消を行うことが重要であり、標準化にむけた作業が必要とされる。原論文１ Data source 1：日本アイソトープ協会　医薬品部体外診断用(インビトロ)放射性医薬品資料集参考資料１ Reference 1：腫瘍マーカー検査の再評価と選択佐藤正己ほか日本核医学技術学会核医学技術 Vol.20 No.4. 2000 274～291 参考資料２ Reference 2：癌の臨床特集腫瘍マーカーの進歩と問題点篠原出版株式会社 Vol.40 No.7.1994.6 キーワード：体外診断用医薬品, in vitro diagnostics, 免疫放射定量測定法, immunoradiometric assay, IRMA, 酵素免疫測定法, enzyme immunoassay, EIA, 化学発光免疫測定法, chemiluminescense immunoassay, CLIA,腫瘍マーカー, tumor marker, 腫瘍胎児性抗原, carcinoembryonic antigen, CEA, αフェトプロテイン, α-fetoprotein, AFP, carbohydrate antigen 125, CA125, carbohydrate antigen 19-9, CA19-9, cancer antigen 15-3, CA15-3 分類コード：030303, 030501, 030504
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